新宿区、猫の水皿に「撤去して」張り紙が「人の心無いのか」と物議 公園担当者は「無許可で置かれた物」と説明
新宿区の公園に設置された地域猫の水用タッパーに対し、区が撤去を要請して物議を醸している。新宿区は「地域猫活動の許可無く設置されたもの」と、回答した。
「感情」は行動を起こす際、非常に強力な原動力となるエネルギー。しかし感情論にばかり囚われていては、社会のルールを遵守することは難しいだろう。
現在X上では、新宿区内の公園に掲出された「警告書」をめぐり、様々な意見が上がっているのだ。
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■猫用の水タッパーに「撤去」の警告
今回注目したいのは、動物愛護団体『地域猫食堂』代表・池尻久良(千春)さんが投稿したポスト。
「皆さん、新宿区の公園で暮らす地域猫が新宿区吉住健一区長の不理解により命の危険に晒されています」と綴られた投稿には、水の入ったタッパーが地べたに置かれた写真が添えられている。
皆さん、新宿区の公園で暮らす地域猫が
新宿区吉住健一区長の不理解により
命の危険晒されています。みどり公園課は2年前に西大久保公園の
地域猫の命のお水を悉く撤去。その結果、シニア猫のタヌキが亡くなりました。
また、その時と同じ事をみどり公園課は
繰り返しています。#拡散希望 https://t.co/wcdrMSz5nC pic.twitter.com/d7IDmyOWYc— ナース千春の地域猫食堂 (@chiharuasno1) May 28, 2026
マジックで「地域猫用」と書かれたタッパーの横には「警告書」と表記された用紙が添えられており、その内容はタッパーの撤去を至急求めるもので、「期日までに撤去しない場合は、不要なものとして処分します」と記されていた。
こちらを受け、ポスト本文には「みどり公園課は2年前に西大久保公園の地域猫の命のお水を悉く撤去。その結果、シニア猫のタヌキが亡くなりました。また、その時と同じ事をみどり公園課は繰り返しています」とも綴られている。

当該のポストは投稿されるや否や話題となり、Xユーザーからは「水くらい置かせてやれよ…」「新宿区は冷たい」「こんな水ひとつ置いたくらいで、迷惑になるものではないでしょ」など、新宿区の対応への疑問の声が寄せられていた。
一方で、「そもそも設置許可を取れば良いのでは」「勝手に置いたら不審物とみなされるし、ちゃんと許可取って活動している他の保護団体に迷惑かかるよ」「管理者に許可を取らず餌やり、水やりをするのは、地域猫活動と呼べない」といった指摘も、少なからず確認できた。
そこで今回は「警告書」をめぐる関係者一同に、詳しい話を聞いてみることに。
■設置者は「排除されている」と主張
ポスト投稿主・千春さんに話を聞くと、当該の写真を5月25日、新宿区・小泉八雲記念公園にて撮影したものと判明。
ことの経緯について、「こちらの公園には14年間、個人で地域猫のお世話をされてきたご高齢のボランティアさんがおられて、地域の方々も非常に協力的でした。過去、地域猫活動に対する苦情は1件もありません。それが4月に突然、公園内に『餌やり禁止』の看板が設置されて相談を受けたので、新宿区議会議員・古畑まさのり氏をご紹介し、古畑議員のサポートのもと、区に地域猫サポーター登録を申請中です。しかし現在、書類不備の理由により審査が止まっている状況です」と、説明している。
※新宿区は「書類不備で止まっている、という事実は無い」と否定

そして5月11日、ボランティアや地域の人々が設置していた給水容器が撤去されたため、千春さんが用意したタッパー(用途・連絡先を記載)を設置し、区に問い合わせと抗議を口頭、書面で行なったという。
すると、新宿区・みどり公園課からは「今後も撤去を継続する」という回答があり、千春さんは21日に行われた区長との意見交換の場「区長と話そう ~ しんじゅくトーク」にて、区の対応を抗議。
こうした経緯を経て、25日に当該の「警告書」を発見し、Xへのポスト投稿に至ったのだ。
また、千春さんは「2年前に地域猫サポーター登録のルールが変更されており、これは明らかに私、および地域猫食堂を排除する目的で変更されています」とも主張している。
■新宿区議会で話題にも
続いては、千春さんの取材時に名前があがった新宿区議会議員・古畑まさのり氏に話を聞いてみる。
すると、3月2日に行われた予算特別委員会にて、みどり公園課長および衛生課長と、地域猫に関する答弁を行なっていたことが確認できた。
同委員会にて、古畑氏は「実際に、既に公園で地域猫活動が行われている」という点を指摘し、「猫は動物であり、餌場を簡単に移動させることは難しい」「地域猫活動者は、公園の清掃や維持管理など地域貢献をしている場合も多い」といった理由から、活動に対する理解を求めている。
こちらの意見を受け、みどり公園課長は「公園での地域猫活動というのはこれまでも行われておりますし、適切に管理をされているということでございましたら、それは公園利用の一つとして認めていくという基本的な考え方を持っているところでございます。
ただ、非常に管理が行き届かないような場合には、少し御相談をさせていただいて、よりよい方向にということで進めていきたいというふうに考えているところでございます」と、回答した(新宿区 令和8年3月 予算特別委員会 03月02日-04号 会議録より抜粋)。
また、衛生課長も「あくまでも公園につきましては、全ての方が利用する施設となっておりますので、地域猫サポーターに登録すれば公園がすぐ使えるということではなくて、公園の使用許可については衛生課のほうで取らせていただいて、その許可の範囲の中でサポーターのボランティアの方々に活動していただくという枠組みで行っておりますので、今後もそういった形で進めていきたいというふうに考えてございます」説明している(同上)。
今回の一件は、同議会でのこうしたやり取りがある中で起きた出来事だったのだ。
■「設置許可取ってない」のが根本の問題
このように、今回の論点となっているのは「公園に水の設置許可を取っているか」という点。
しかし前出の通り、千春さんの言い分では高齢のボランティアの申請は書類不備で止まっており(新宿区は「書類不備で止まっているという事実はない」と否定)、千春さんは以前サポーターの認可が下りなかったことから、3年間は申請しても「認可が下りない」という状況なのだ。
これらを鑑みると、ルール上は新宿区の対応が正しいのだが、動物愛護の根本にあるのは動物に対する「かわいい」「かわいそう」といった感情である。
そのため、新宿区の対応に「(夏を目前に猫から飲み水を奪うなんて)人の心が無いのか」と感じた人が少なからず存在し、今回の物議を(区の主張とはズレた視点から)ヒートアップさせているものと思われる。
そこで続いては、新宿区・みどり公園課に話を聞いてみることに。
6月4日の取材にて、同課担当者は「新宿区立小泉八雲記念公園において、区が警告書を貼付した容器に関連すると思われる動物に関するトラブル等は、現時点では発生していません」と、説明する。

その上で、「公園における地域猫活動の許可なく同物件が設置されていたため5月25日に、6月1日を期限として撤去するよう警告書により警告しました。しかしながら、Xにおける当事者の投稿を踏まえて6月1日に現地を確認したところ、警告書が無くなっていたため、同日に6月8日を期限として撤去するよう再度警告書を貼付しました。このように区の許可なく行われる不法行為については引き続き、口頭注意又は警告書により是正を指導していきます」と、区としての対応を説明してくれた。
■新宿区に話を聞いた
前出のように、新宿区では「新宿区地域猫対策サポーター」というボランティアの登録制度を採用している。一定の要件を満たした人物(地域猫対策サポーター)には、サポーター証と腕章が貸与される。
だが、これも前出の通り「地域猫活動をするに当たり、申請や届け出が必須」というワケではない。あくまでサポーター登録制度は、地域の理解を得やすくするため、腕章とサポーター証を手渡すものであり、他者の敷地内で活動をする際は、敷地管理者の承諾が必須。
しかし「区立公園で地域猫活動を実施する」場合は、地域猫対策サポーターに登録のうえ、公園の占用許可を受ける必要がある。今回のケースではいずれの条件も満たしておらず、担当者は「本公園では地域猫対策サポーターの登録はありません」と、念を押している。
続いては、新宿区の対応に関する「千春さんの言い分」について、区の見解を聞いた。
まず、西大久保公園から猫用の水容器が撤去され、その結果「高齢の猫が死んでしまった」という件について、担当者は「西大久保公園において、給水用洗面器を撤去したことは事実です」と、認める。
続けて「しかし、公園における地域猫活動の許可なく同物件が設置されていたため、警告書を貼付し、期限内に撤去されなかったことから区が回収しました。この他、段ボール等で作成した猫ハウスも許可なく公園に設置していたため、撤去をしています。なお、当該給水器の回収が原因となって地域猫が衰弱死したとの事実については、飲水は公園以外の場所でも可能であることから、区として確認しておりません」と、区の見解を回答している。
また「申請中」だという地域猫対策サポーターについても、「6月1日時点では、申請は出ておりません」と、説明していた。
■地域猫対策サポーターの改正、なぜ起こった?
今回、何度も話題に上がった地域猫対策サポーター。直近では2025年2月27日に改正が行われている。
千春さんが「我々を排除する目的で変更した」と主張する改正の経緯について、新宿区は「改正により、地域猫対策サポーターの役割や遵守事項を明確にしました。これは、一部の方が地域猫対策サポーターであることをもって、周囲への協力を強いたり、区の方針と異なる活動を行なうなどのトラブルが生じたことを踏まえ、より適正なルール運用とするためです」と、説明している。
この時に追加された要件は「区が行う地域猫対策に協力でき、区や区民との信頼関係を構築できること」「過去3年以内に登録を抹消又は非登録通知を受けた者でないこと」の2点。
以前に非登録通知を受けた千春さんは後者に抵触してしまうため、「自身を排除する目的」と感じたのかもしれない。
そもそも「地域猫対策サポーター」という制度が2018年に導入されたのは、「近隣住民に地域猫活動を理解してもらえない」「適切に餌やりをしているのに、警察を呼ばれた」などの相談が区に寄せられ、「区で腕章を作成してほしい」という要望を受けてのことだという。
なお、本取材における新宿区の回答に対し、千春さんは「事実と異なる部分がある」と主張。AI生成によるものと思われる怒涛の長文が送られてきたが尺の都合上、記事内での紹介は割愛する。
最終的に当該の公園にいた猫を引き取る里親が見つかったそうで、千春さんは「最高の形で完結しました」と、投稿している。
【ご報告】小泉八雲公園の水皿撤去問題
最高の形で完結しました。以前からこの子達をよく知る方が
家族として迎えてくださいました。noteの記事をご一読頂けたら幸いです。https://t.co/VoH3wH3mnx https://t.co/H5F5UtzFfL
— ナース千春の地域猫食堂 (@chiharuasno1) June 15, 2026
結果だけを見れば、ハッピーエンドかもしれない。しかし、「まるで成果の如く書いているが、実態は『トラブルを見かねた心優しい人が里親になってくれた』だけのようにしか見えない」といった指摘も散見されている。読者諸君は、どのように感じただろうか。
民と官で立場は違えど、命を尊重し、救いたいという思いは共通。人間社会のルールを遵守しつつ、地域猫たちにとって住みやすい空間が形成されることを願いたい。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。道路・鉄道ネタに関する取材で、国土交通省や都道府県警、全国の道路事務所、鉄道会社に太いパイプを持つ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)




