ICUで13日間… 新型コロナウイルス感染症に打ち勝った重症患者
慢性疾患があれば、50代であっても新型コロナウイルス感染症は重症化しやすい。

日々、深刻さを増す新型コロナウイルスのニュースには気が重くなるばかりだが、絶望的と思われた重症患者が見事に生還したというポジティブなニュースも大きく報じられている。
■37.2度の発熱から始まる
2月27日、軽い咳と37.2度の発熱で街のクリニックを受診した際は、軽い風邪だと思いこんでいたというシンガポールの50代の男性。現地メディアでは、「ベンさん」とだけ明らかにされた。
同29日に熱が38度に上昇し、乱高下を経て3月5日に体調が急激に悪化したベンさん。クイーンズタウンにあるアレクサンドラ病院へ運ばれ、そこで新型コロナウイルスへの感染が判明した。
■持病のせいで重症肺炎に
高血圧と糖尿病の持病があるベンさんは、新型コロナウイルスに感染したら肺炎の重症化が心配されるハイリスク群だった。
あっという間に重症の呼吸不全に陥ったベンさんにはICU(集中治療室)で人工呼吸器が取り付けられ、高濃度の酸素が送られた。しかし意識はもうろうとなり、高用量の鎮静剤の副作用で幻覚やせん妄も起きるようになった。
ベンさんはインタビューで「部屋のいたるところにエイリアンの姿が見えた」「言葉の通じない悪魔に何度も追いかけられた」などと話している。
■死を意識するように
気道を確保するための「気管挿管」も行われたが絶望的な状況は変わらず、ベンさん本人も家族もついに「死」を予感するようになった。
そんな彼を救ったのは、リウ・メイ・フォン(Liew Mei Fong)医師の判断で投与が試みられた『カレトラ(Kaletra)』。これは抗HIV薬の『ロピナビル』と『リトナビル』を配合した薬だという。
■ついに自力で呼吸が
やがて人工呼吸器は左右の鼻の孔に挿入する経鼻カニューレへと変更になり、ついに自力での呼吸が可能になった3月17日、ベンさんはICUから隔離病棟へ。さらに24時間ごとのウイルス検査で3度とも「陰性」が確認され、21日には退院が叶った。
ベンさんはインタビューで「決してあきらめず、熱心に治療を続けてくれたお医者様と、とても親切な看護師さんたち。アレクサンドラ病院の皆様には心より感謝しています。今、自分がこうして生きていることは奇跡のようです」と語っている。
■アビガン承認を待つ日本
有効な治療薬やワクチンの開発は世界的に急務となっており、多くの国で複数の薬について試験が続けられている。日本では3月29日、安倍内閣総理大臣が「新型インフルエンザ薬『アビガン』を、新型コロナウイルスの治療薬として正式に承認するためのプロセスに入る」と話した。
このたびベンさんに投与された抗HIV薬の新型コロナウイルス感染症の治療効果に関しては、WHOを中心が研究および試験を進めているという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)






