美味しい酒の次に重要になるブランディング 情報過多の時代にイメージを守る『緑川』

よい酒造りはもちろん、売り方やブランドの構築にも余念がない。

■こだわりの酒米は先代の思いが詰まった希少な米

酒米

緑川酒造が使用している米がまた、珍しい。主軸となっているのが、北陸12号。控えめな味わいで軽やかな飲み口、寝かせても重くならない。

「食事の傍らにあって、いつの間にか飲んじゃったな、と思うような酒がいい酒だと思う」 と社長の求める酒にはぴったりだ。

北陸12号は、古い歴史を持つが、先代が途絶えていたものを種もみから増やした。新潟ではここだけ、他県でもわかっているのは1蔵だけという希少さだ。

そんな背景だから、北陸12号は全て地元小出地区産。その他も含めて使用米は県産米100%担っている。 契約農家との取り組みは30年前から続き、現在20軒あまり。農家の方達は「プライド」という研究会を結成して、研鑽に励んでいる。

「近いから田んぼを観に行きやすいんですよ。でも、20軒だから、たいへん(笑)」


米の専門家と、田植え前、穂肥前、刈り入れ直前など折々に足を運ぶのだという。


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■酒を愛してくれる人に扱ってもらいたい

緑川

最後に大平社長が変えたのは、なんと取引先だ。「うちのお酒を本当に気に入ってくれている人に託すのが一番いい」 という思いを持って、大平社長と営業部員のたった2人が北海道から九州まで回ったのは、四半世紀も前。

日本酒にも特約店のシステムが取り入れられてまだ数年だった。自社の方針に賛同してくれる酒販店もあれば、手を引く店も、噂を聞いて新たに取引を希望する店もあった。5年以上かけて回った結果、ほとんどが入れ替わったという。

今もその方針は変わらない。不正なネット販売も少なくない時代、リスク管理も怠らない。逆トレースできる工夫もはじめている。

「暴れん坊、乱暴者だったから……」と、ジョーク交じりに淡々と自身を語る大平社長。まだ若かった25年前に大きく切った舵は、確実に未来を捉えていた。そして今も、未来を見据えている。

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■新潟淡麗にも繊細な違いが