「トリケラトプス」区切り方を7割の人が誤解、と思いきや… 専門家は「前提がおかしい」と指摘
ネット上では度々「トリケラトプス」の正しい区切り方が話題に。しかし恐竜の有識者は「前提がおかしい」と、警鐘を鳴らしている。

「恐竜」と聞けば、多くの人がティラノサウルス、そしてトリケラトプスの姿を連想するのではないだろうか。
そんな人気恐竜のトリケラトプスだが、ネット上では以前より、こちらの恐竜の名称の「意外な区切り方」が話題となっているのだ。
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■トリケラトプス、どこで区切る?
ことの発端は、教養になる知識やクイズを図解で発信するXユーザー・けんたろ氏が投稿した図解。
「区切るの『そこ?!』な言葉30選」と題したリストには「ヘリコ・プター」「プリマ・ドンナ」「コレ・ステロール」など、妙に違和感を覚える部位で区切られた単語がズラリと並んでいたのだ。
こちらの図解はネット上で度々話題になっており、X上でも定期的に画像は引用されているのを目にする。
そこで今回は全国の10~60代男女751名を対象としたアンケート調査にて、同図解にもあった「トリケラトプス」の区切り方について尋ねてみることに。

調査の結果、けんたろ氏の図解にあった「トリ・ケラトプス」を選択したのは全体の27.3%、もう一方の選択肢「トリケラ・トプス」を選んだ人は72.7%と判明したのだ。

なお、性年代別の回答を見ると、全年代を通じて女性より男性の方が「トリ・ケラトプス」を選択した人物の割合が大きくなっている。
■「日本語表記」に正しいも何も無い?
そこで今回は、名古屋大学博物館講師の藤原慎一氏に「トリケラトプス」の語源や区切り方について、詳しい話を聞いてみることに。
トリケラトプスの化石は、後期白亜紀(1億50万年~6600万年前)という時代区分をさらに細かく分けたうち、最後のMaastrichtian(マーストリヒチアン: 7220万年~6600万年前)という時代からしか見つかっていない。
化石が見つかっているのは北米西部のロッキー山脈の東側に広がる平地で、カナダ(サスカッチュワン、アルバータ)、アメリカ(モンタナ、ノースラロライナ、サウスカロライナ、ワイオミング、コロラド)の州境を縫うように分布する地層から見つかっている。
「トリケラトプス」の区切り方に対し、藤原氏は「そもそも、ラテン語の綴りで書かれているものを、強引に音読みさせたものがカナなので、カナ表記に正しさを求めること自体に無理があるのではないでしょうか」と、前置き。
続けて、「ラテン語の綴りが唯一絶対の正しい表記(学名)です。それをどう読むかは、国によっても大きく異なります。カナは表音文字なので、それをどう読ませているかに大きく影響します。日本語の恐竜のカナ表記は、ラテン語読み、英語読み、米語(アメリカ英語)読みをごちゃまぜにしたものが多く、ルールや法則で捉えようとすると、カオスの世界です」と、注意を喚起している。
例えば恐竜の代名詞・ティラノサウルスはラテン語表記だと「Tyrannosaurus」、そしてラテン語本来の発音に近い表記は「テュランノサウル」、これが米語の発音になると「タイラノソーラス」「ティランノソーラス」、そしてドイツ語発音になると「チランノザウルス」といった具合に、てんでバラバラなのだ。
なお、日本語表記でよく使われる「ティラノサウルス」は米語とラテン語のミックスだという。
■語源で見れば3つに区切れる名前
こうした条件を踏まえ、藤原氏は「Triceratops」(トリケラトプス)の語源を以下のように説明している。
τρι→tri(ギリシア語→ラテン語化)のトゥリは「3つの」、そしてκερατ→kerat-(ギリシア語→ラテン語化)のケラトゥは「角を持った」、ὤψ→ōps(ギリシア語→ラテン語化)のオープスは「顔」という意味。
そのため「Tri / cerat / ops」をカナ表記にするならば、「トゥリ/ケラトゥ/オープス」という区切りが「語源で考えた場合の」区切り箇所になるというのだ。
命名の経緯について、藤原氏は「この恐竜化石を1889年に初めて記載した古生物学者のオスニエル・チャールズ・マーシュが、3本の角を頭部に備えている特徴を学名に反映させた形になります」と、補足している。
日本語ではローマ字発音で「トリケラトプス」と発音されるが、アメリカでは「トライセラトップス」と発音されるそう。
また、ラテン語圏の文化では、たとえ母音の発音が異なっていても、綴りが理解できれば通じる側面もあるという。
こうした事情を踏まえ、藤原氏は「『tri』は『トゥリ/トライ』などのバリエーションが、『ceratops』には『ケラトップス/セラトップス』といったバリエーションが許容されています。その組み合わせは国や地域、個人によって異なりますが、彼らはそれを大きな差異と認識していないと思います」「しかし表音記号たるカナ文字を使っている日本人には、そうした点に大きな差異を見出す傾向がありますね」とも分析していた。




