「市ヶ谷」検索ではクーポン利用不可、マクドナルド市ケ谷店に疑問の声 現代は3つの「いちがや」表記あると判明
モバイルオーダー時に「市ヶ谷」で検索に対応していないマクドナルド「市ケ谷」店が話題に。新宿区は「3つの表記が混在している」と、事情を説明する。
■地名の「いちがや」はいつから存在した?
それでは漢字表記はさておき、地名としての「いちがや」は、いつ頃から存在していたのだろうか。
前出の『新修 新宿区町名誌』によると、「鶴岡八幡宮古文書」内、鎌倉時代末期の正和元年(1312)に、「武蔵国金曾木彦三郎並市谷孫四郎等所領」と、市谷氏という人物に関する記載があることが判明。
新宿歴史博物館の担当者は「この苗字については地名から取ったという説があり、その場合は鎌倉時代より前に遡る可能性があるとされています」と、説明している。
なお、こうした苗字の付け方は現在の新宿区牛込を所領していた牛込氏や、江戸川区周辺の葛西を所領していた葛西氏などが代表として挙げられ、担当者は「当時はよくあることであったと思われます」ともコメントしていた。
■「いちがや」表記にもトレンドがあった
そして時は流れ、江戸時代から明治中頃にかけては「市ヶ谷」表記が、明治末頃からは「市谷」表記が多くなっていく。

なお、甲武鉄道(現在の中央本線の一部)ができた1894年(明治27年頃)は「市ヶ谷」が主流だったという。地名の表記にもトレンドがあったのだと思うと、急に親しみが湧いてこないだろうか。
そうした背景もあり、現在のJR駅も「市谷」ではなく、「市ケ谷」表記になっていると思われるが、「ケ」と「ヶ」の使い分けについては、新宿歴史博物館でも詳しいことは分からないそうだ。
そもそも「ケ」と「ヶ」の識別自体が難しい理由として、当時の資料は「縦書き」が主流である点が挙げられる。
新宿歴史博物館の担当者は「『ヶ』の表記一つをとっても、小さい『ヶ』なのか、大きい『ケ』が潰れてしまったものなのか、判断が難しいです」とも語っていた。

現代に生きる我われは豊富で見やすいフォントや、PCやスマホを使用することで、「市ヶ谷」と「市ケ谷」の違いにも一目で気がつける。
そう考えると、現代と比較して当時の印刷技術が貧弱だった点も、「ケ」と「ヶ」の混在や誤読に拍車をかけていたのではないだろうか。
「市ヶ谷」を筆頭に、全国各地に存在する地名表記の混在。その土地の歴史を紐解いてみれば、新たな発見があるかもしれない。
■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。
以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。 X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。道路・鉄道ネタに関する取材で、国土交通省や都道府県警、全国の道路事務所、鉄道会社に太いパイプを持つ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)




