朝8時の温泉旅館、宴会場で『スト2』興じる光景が話題 30年前の「1冊の同人誌」がきっかけだった

午前8時から温泉旅館の宴会場で『スパ2X』に興じる大勢の人々の様子が「最高すぎる」と話題に。イベント運営は「下は10歳、上は50代の参加があった」と語る。

2025/12/29 11:15

「温泉旅館の朝」と言えば、やはり朝風呂。起きてすぐ至高の温泉に浸かるのは、これ以上ない贅沢である。

しかし現在X上では、早朝の温泉旅館の宴会場で目撃された信じがたい光景が「最高すぎる」と話題になっているのをご存知だろうか。


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■早朝の宴会場で興じているのは…

ことの発端は、Xユーザー・MDC本舗@HAGANEさん(使用キャラ:Xブランカ)が投稿したポスト。

「世界よこれが朝8時の日本旅館の風景じゃガハハ」と世界に向けて発信された投稿には、格闘ゲーム往年の名作『スーパーストリートファイターIIX』(エックス)に興じる人々の写真が添えられている。

アーケードのゲーム筐体がズラリと並んでいることから早朝のゲームセンターと思いきや…浴衣を着用している人の姿が。そう、こちらはポスト本文にもあるように、温泉旅館の宴会場にて『エックス』をプレイする人々を収めた写真だったのだ。

SPA2X in けやき
画像提供:弁田さん

『エックス』がアーケードにて稼働したのは1994年。とても令和とは思えない光景である…。

こちらの光景は人々に多大な衝撃を与え、Xユーザーからは「旅館と言えば、やはりゲームセンター」「スリッパ履いてプレイしてるのが、また良い」「めちゃくちゃ楽しそう」「最高の朝活」など、称賛の声が相次いでいた。

SPA2X in けやき
画像提供:弁田さん

調べたところ当該の写真は、山形県東根市の温泉旅館「琥珀の湯 欅の宿」にて開催されたイベント「SPA2X in けやき」のワンシーンであることが判明。

そこで今回は、同イベントの運営者に詳しい話を聞いてみることに。

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■平成初期:格ゲー黎明期

取材に応じてくれたのは、宮城県仙台市在住の『エックス』プレイヤー・弁田さん(使用キャラ:X本田)。

仙台のゲームセンター「ゲームコーナー東部」の常連で、毎月開かれている『エックス』大会のほか、今回話題になった「SPA2X in けやき」の運営も担っているという。

そんな弁田さんは「SPA2X in けやき」は、「様々なプレイヤーの交流がきっかけで誕生した」と語る。

同イベント開催に大きく関わっているのが、カメラ屋さん(使用キャラ:Xケン)。カメラ屋さんと言えば『エックス』全盛期に「足払い戦最強」と言われたレジェンドプレイヤー。

『スト2』稼働黎明期に当たる1990年代初頭は現代のようにインターネット文化が発達しておらず、格ゲーコミュニティ内での情報共有は、現代とは比較にならないほど限られていた。しかし、そうした環境を補って余りある「プレイヤー達の熱量」が存在したのだ。

中でも、カメラ屋さんが発行した『スト2』攻略本の同人誌『感謝で昇龍拳』は多くの格ゲーマーに感銘を与え、令和の今なお「格ゲーのバイブル」として名高い存在である。

その影響は凄まじく、『スト2』直撃世代ではないうえ、他ゲー勢の記者(使用キャラ:ウル4バルログ)でもその存在を認知しているレベルだ。

そんなカメラ屋さんは現在、情報通信ネットワーク事業の会社・株式会社ATKの代表取締役社長を務め、本業のかたわらゲームセンターやアーケードゲーム関連の支援を行っている。

さらに、特定非営利活動法人「感昇」理事長として、『スト2』をはじめとするアーケードゲーム大会の企画・運営・支援を行う団体で活動しているのだ。

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■「ゲームセンター」という文化

新型コロナウイルスの流行、度重なる物価上昇、格闘ゲームは「家庭用でプレイする」という風潮が大きな逆風となり、近年は全国でゲームセンターの閉店が相次いでいる。

しかしゲーセンという空間でしか得られない興奮と熱狂、そして仲間に魅せられ、「おれたちのeスポーツ」に勤しむべく、今なおゲーセン通いを続ける各ゲーマーが少なからず存在するのも事実である。

続いて紹介したいのが、「山形 名作アーケードゲーム倶楽部」として東北地方のゲーム文化保存事業に貢献するJACKさん。JACKさんは、山形にあったゲームセンター「ジャック&ベティ山大前店」の元店長という経歴の持ち主。

ゲーム雑誌『ゲーメスト』スタッフが全国各地のゲームセンターを回るイベントの一環で訪れたことがあるほか、あのプロゲーマー・梅原大吾氏がイベント来店したこともあり、同店は「2D格闘ゲームの聖地」として知られていた。

東北のゲーセンが次々と閉店している状況を憂いていたJACKさんは、「ホテルにゲームコーナーを作り、ゲームセンターに代わるゲームコミュニティを作る」という構想を練っていた。すると、こちらのアイデアに共感したカメラ屋さんが企画を支援。

そしてJACKさんが情報収集した結果、東根市でeスポーツ事業に力を入れている温泉旅館「琥珀の湯 欅の宿(当時東根グランドホテル)」と出会ったのだ。

その後、JACKさんは旅館に通い詰め、ゲームセンターとeスポーツの現状について、旅館の担当者と語り合う。そして次第に、ATK支援の元、様々なアーケードゲーム筐体が旅館に設置されるようになった。

さらなる転換期が訪れたのが、2023年11月。

とある山形のプレイヤーから「コロナ禍以降、『ヴァンパイアセイヴァー』の大規模大会が開催されていないので、みんなが集まれる大会を開催したい」という相談を受け、ついに「琥珀の湯 欅の宿」にて、初めてのアーケード格ゲー大会イベントが開催されたのだ。

ちなみに、今から30年以上前にJACKさんが『感謝で昇龍拳』を通販購入し、カメラ屋さんと手紙で交流するようになったのが、2人のファーストコンタクトだという。

あの頃全国に撒かれた格ゲーの火種が、時を超えて「ゲーセンの格ゲー」という文化を再度盛り上げているという事実に、胸が熱くなってこないだろうか。

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■最年少の参加者は「10歳」と判明