『救国のスネジンカ』崩壊寸前の軍事国家で戦い抜く少女たち 重税に耐えながら生き延びたその先には…?

給与明細を見ても泣くんじゃない。ディストピア世界で少女たちがたくましく生きる良質な鬱ゲー『救国のスネジンカ』を遊んでみました。

Sirabee読者の皆さんこんにちは、バッドエンドは苦手だけどメリーバッドエンドはギリギリ耐えられる貧弱マインド系VTuberの幽霊坂ゆらぎです。

今回は登場する女の子の可愛さとエンディングの後味の悪さに定評のある『救国のスネジンカ:Sentinel Girls2』をプレイして、できるだけ残酷な現実から目をそらしつつレビューをしていこうと思います。

*このレビューはストーリーに関する若干のネタバレを含んでいます。自分で知りたい人は今すぐゲームをプレイしてね!


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■ディストピアで暮らす姉妹の物語

まず、本作は2021年8月に発売されたハイテンポタワーディフェンスゲーム『溶鉄のマルフーシャ』の続編にあたります。

ざっくりストーリーを説明すると、国民が10段階の等級に分けられているディストピア感漂う架空の軍事国家カゾルミアで、マルフーシャと義妹のスネジンカはパン屋を営んでいました。

ある日、マルフーシャは兵員不足によって強制的に徴兵されてしまいますが、幸か不幸かそこで才覚を表し、精鋭部隊「溶鉄」に配属され最前線で戦うことになってしまいます。

休む間もなく激戦区に送られ、ついには出撃したまま消息不明になってしまった姉を探し出すため、スネジンカは自ら志願して民間軍事会社「ブルーピーコック」に入社し、銃を手に取ることに…。

(国民の英雄として祭り上げられたマルフーシャはボロボロに…)

と、ここまでが本作の大体のあらすじになります。とりあえずカゾルミアは色んな意味で終わってる国だということと、そこに生きる少女たちに罪はないということだけ覚えておけば大丈夫です。

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■あちこちに漂う救いのなさ

本作のシステムはタワーディフェンス+3択強化のローグライトをベースにしつつ、そこに「戦う少女」と『Papers, Please』のような政治的要素を合わせることで、オリジナリティ溢れる作品に仕上がっているという印象です。

ストーリー面についてはここで説明すべきかどうか大いに悩むところではあるのですが、基本的にはほぼ、不幸になると思ってください。

(ダメな大人たちが統治するダメな国、それがカゾルミア)

まぁ、兵員不足という理由でただのパン屋にすぎないマルフーシャ達を徴兵している時点で、カゾルミアが末期的状況なのは明らかですよね…。

ただ、登場人物が不幸になるための道筋がとにかくたくさん用意されていて、そのどれもがプレイヤーの心にグサリと刺さるものばかり。

思い出すたびに心が痛んだり、「救いはないんですか?」と叫びたくなったり…こんなシナリオを生み出した開発者はきっと不幸のマイスターに違いありません。

その上、たとえ終わり方は悲惨なものであっても、そこに至るまでの過程はツンデレ上司や同部屋の相棒とのほんわかコミュニケーションであったり、ささいな幸せを見つける日々であったりするので、落差で余計に落ち込みます。

(一見高圧的に見える上司のダチカさん。じつはめちゃくちゃ面倒見がいい人です)

とはいえ個人的には確実にプレイヤーの心の中に何かを残していく作品だと思いますので、ここまでの説明で惹かれた人には強くおすすめしたい作品です。

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■タワーディフェンス+シューティング

続いてはゲーム内容の説明に移りましょう。民間軍事会社「ブルーピーコック」に雇われたスネジンカですが、やることは前作同様、防衛目標を守りながら襲ってくる機械兵を撃退するタワーディフェンスゲームです。

(画面右側から押し寄せる敵を撃退する、基本はこれだけです)

ゲームのベース部分は非常にシンプルな構成となっていて、ストーリーのカットシーンを除けば、基本的にタワーディフェンスパートと宿舎パートを繰り返すだけです。

タワーディフェンスパートについても、一方向からこちらに向かってくる機械兵をエイムして撃つというというもので、背後から襲われたり、包囲されるといったこともありません。

1日1回の戦闘は非常にスピーディーで、襲撃してくる機械兵のウェーブを全滅させれば即終了。早ければ1日が数秒で終わることもあります。

そして1日の終わりには給金が支払われるので、それを使って強力な武器を買ったり、スネジンカのステータスを強化していくというのが一連の流れになります。

(一日を耐えきればスネジンカや仲間の強化が可能、ただしクレジットは必要…)

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■税金、税金、税金!

ここまでは非常にオーソドックスなゲームシステムといえるのですが、本作のクセが強いところは、カゾルミアの不安定な政治情勢が、戦闘の報酬にダイレクトに影響するという点。

日数が進むにつれて様々な名目の税金が追加されるので、その分がスネジンカのお給金から天引きされることになります。『Papers, Please』の国境検問所の悪夢が蘇るようです。

(この控除欄、人によってはなんらかのトラウマを発症してもおかしくありません)

一日の終わりには給与明細が表示されます。この画像では会社から支払われている額面は60クレジットですが、諸々の税金が差し引かれた結果、なんと手元にはたったの3クレジットしか残りません。

ちなみに本作における3クレジットがどれくらいかというと、ステータスを1上昇させるには2クレジット、銃器の購入には10~15クレジットほどかかります(しかも銃器には耐久力があるため、消耗品です)。

さらにこの金額は防衛目標の受けた被害の量などによってもマイナスされるため、下手をすると一日働いて0クレジットしか得られなかった、ということもあり得ます…。

各種税金はカゾルミアの情勢が悪くなるのに従って次々と新しい項目が追加されていくので、激戦を耐えて基本給が上がっていっても、生活はちっとも楽になりません。

(ゲームを進めると、難癖に近いレベルの税が続々と追加されていきます…)

結果として、限られたリソースでギリギリまで耐えたり、上手にやりくりするのが非常に重要なゲーム性になっています。

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■仲間との友情、そして…

本作では「仲間」の存在がストーリーにもシステム面にも大きな影響を与えています。

(本レビューでお世話になったデジクちゃん。かわいい)

「マルフーシャ」と同様に一緒に戦ってくれる仲間を一人まで雇うことができて、タワーディフェンスパートでは頼もしい活躍をしてくれます。

(仲間がいると火力が増えて防衛がグッと楽に)

要するにバディ的な存在で、彼女たちは戦闘でも非常に役に立ってくれるほか、ストーリー面でも大きな役割を果たしてくれます、

一定の日数ごとに訪れる宿舎のパートでは、同部屋で過ごしている彼女たちの生活を垣間見ることができるほか、絆が深まることによって専用のストーリーやカットシーンを見ることができます。

(仲間との日常パートが、戦闘でささくれた心に染み渡ります)

最前線で身を粉にして働いても税金で9割持っていかれるすさんだ日常を過ごしていると、高圧的に見えてじつは優しい上司のダチカや、仲間とのなんでもない会話がどれほど癒されるか…。

(有能上司のダチカさんも、絵だけは苦手な様子)

もちろん一人旅を選ぶこともできますが、選んだ仲間によって実質的にエンディングが変化するので、仲間の数だけストーリーがあります。

是非とも自身で選んだ仲間との友情を育み、お互いの弱さや本心などを知った上で、救いのないエンディングを堪能してください。

(仲間と一緒に強敵を倒し、エンディングを迎えましょう…!)

私はこの過程で何度か塵になって消えかけましたが、どうにか再生してこの文章を皆さんに届けています。


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■すべては説明されていない

さて、ここまで「バッドエンド」ばかり強調してきましたが、実際のところほとんどのストーリーパートは明るく楽しいもので、続きを楽しみにしながら見られるものでした。

(入寮初日で誰かが書いてくれたメモ。…一体どこの優しい人なんでしょうね?)

少女たちが不幸になっていく過程も決して支離滅裂なものではなく、「こんな体制の国だったらそりゃそうなるよね…」という諦めにも近い納得感が得られるよう、しっかりと描写されています。

また、本作のシナリオはそれぞれのキャラクターの視点では全ての情報が明かされないため、他のキャラクターのストーリーを見たり、細かい描写を見落とさないことで、「あれはこういうことだったのかな」と推測する余地があります。

こういった世界観や設定に強く惹かれる部分があると感じた方は、是非とも『溶鉄のマルフーシャ』と合わせて本作をプレイしてみてはいかがでしょうか?

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(文/Sirabee 編集部・幽霊坂ゆらぎ

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