『サガ エメラルド ビヨンド』プレイレビュー 脳汁が出るバトルと理解不能なシナリオが織りなす唯一無二のRPG
「本当に同じゲームの話してる?」 令和の時代に絶対に人と展開が被らない奇跡のようなゲーム『サガ エメラルド ビヨンド』を遊んでみました。
Sirabee読者の皆さんおはようございます、一番好きなサガシリーズの楽曲は『サガ フロンティア』のCMに使用されていた戦闘曲のオーケストラアレンジ、VTuberの幽霊坂ゆらぎです。
かつては魔界塔士のエスパーギャルだったこともあり、「サガ」シリーズの最新作には触れないわけにはいかない、ということで、今回は『サガ エメラルド ビヨンド』を皆さんに紹介していこうと思います。
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■シリーズ35周年の最新作
本作は、4月25日にスクウェア・エニックスからNintendo Switch/Play Station4・5/Steam/iOS/androidで発売されました。
サガシリーズについては、1作目の『魔界塔士サ・ガ』が1989年にゲームボーイ初のRPGとしてリリースされています。
初代『ポケットモンスター赤・緑』が登場する7年も前に、携帯機であそべる長編RPGとしてこの世に生を受けた初代サガ。
既存のファンタジーRPGの枠組みにとらわれず、敵が落とした肉を食べて進化するモンスター、荒廃し殺伐とした世界観、けれん味のあるセリフ回しなど、独自色の強い要素が満載でした。
その後も同シリーズは見た目やコンセプトを変化させながら、時代ごとのゲームハードで作り続けられて今日へといたるわけです。
本作は、35年の歴史を持つ歴代のサガシリーズから、ストーリーやシステム、象徴的なアイテムなど多くの要素を受け継いだ作品です。
それらは「チェーンソー」や「アイスソード」といったわかりやすいものから、「ひらめき」などのシステム、またはシナリオに隠された設定まで様々。
時にさりげなく、時に露骨に、ゲーム中のいたるところにちりばめられているので、シリーズファンはこういった要素を見つけてまわるのも楽しいと思います。
もちろん、これまでに全くシリーズを遊んだことの無い人でも問題なく遊べますので、ここから本作ならではの魅力を紹介していこうと思います。
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■複雑に分岐し、自由度が高いシナリオ
さて、どこから紹介したものか迷いますが、まずは主人公が複数いて、自由にキャラクターを選べるシステムからいきましょう。
選んだキャラクターによって遊ぶシナリオが変わるところは『オクトパストラベラー』や、最近リメイクもされた『ライブアライブ』みたいな感じですね。
ただ、他のゲームと違うところは、プレイヤーが選んだ主人公とその順番によって、別の主人公のシナリオやゲームバランスにも大きな影響を与える点です。
例えば先ほど例として挙げた『ライブアライブ』では、7人の主人公のストーリーを個別に進めた後、最終章で全員が仲間として合流するアツい展開が待っています。
ところが本作では、別の主人公がシナリオの途中で仲間として加入することもよくあることで、加入する際の性能は、その主人公のシナリオで育成した強さになります。
そうなると、以前にそのキャラクターをゴリゴリに育成していた場合、仲間にできたら即戦力どころか、シナリオがぶっ壊れるレベルの活躍をさせることもできるわけです。
また、そういった「キャラクターが仲間になる・ならない」のフラグもそうなのですが、道中の選択肢やバトルの勝敗、ちょっとした寄り道によっても、その後のシナリオが大きく変化してしまうんですね。
これに関しては、「プレイヤーごとに同じ体験は無い」と言えるほど展開に幅があり、時にはシナリオのボスや結末さえも全く別物になってしまうほどです。
私個人の話になりますが、同じ時期に本作を始めた人とある主人公のシナリオについて話をしていた時、そこでの話が全くかみ合わないという不思議な体験をしました。
その時は同じ主人公、同じシナリオの話をしているのに、登場人物の行動や性格が全く違っており、お互いに「別のゲームの話をしているのか?」と思ってしまうほどでした。
さらに、それらの要素は「周回数」や「クリア済みのキャラやシナリオ」によっても変化するというから、本作で最初から最後まで他人と同じ体験をする、というのはほとんどありえません。
インターネットにより攻略情報が簡単に入手できるこの令和の現代に、「同じゲームを遊んでいて話がかみ合わない」という不思議な体験ができるのも、本作ならではの魅力の一つと言えると思います。
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■快適なバトルのための最適化
具体的なゲームプレイに話を移しますが、本作は前作にあたる『サガ スカーレット グレイス』の系譜でありながら、前作にあった様々な要素をパワーアップさせています。
例えば、プレイアブルキャラに人間しかいなかった前作に対して、メカやモンスター、傀儡、眷属など、本作では実に多様な種族が登場し、その世界観も様々です。
それでいて「バトルの準備のためにバトルをする」ような、バトルに振り切ったシステムは健在で、バトルを快適に遊ばせるため、他の要素は最小限に抑えられています。
先ほどのストーリーについての紹介で、かなり複雑な印象を抱いた人も多いと思いますが、じつはストーリーの進行そのものは非常に簡単で、展開もあっさりとしています。
主人公たちの目的は違えど、基本的に「連接世界」という枝分かれしたエリアから様々な異世界を訪れ、そこで出会った人たちと交流するという部分は共通しています。
ただし、必ずしもそこで起きた問題を解決する必要はなく、自分の目的さえ果たしてしまえば、その世界のピンチを見捨て、ボスをスルーすることも時には可能なのです。
なんなら、最初からずっといる仲間達や、新規メンバー加入時によくある個別エピソードの掘り下げなんてものも、(基本的には)ありません。
人によっては「手抜き」と感じそうな部分ですが、これらは前作から一貫してそのように作られていて、全てが極力バトルの邪魔をしないように設計されています。
例を挙げると、プレイヤーが次にどこで何をすればいいかは、すべてマップ上に表示される緑や青の線がつながった扉で表されているため、迷うことがありません。
マップ上に表示されている建物などはすべてペラペラのハリボテで、中に入ることすらありません。
シナリオの進行は短い会話パートでのみ進行するので、バトル以外でやることはマップの移動と、会話で決定ボタンを押すことくらいでしょう。
さらには後述する「周回」を前提としたゲームシステムのため、長めのカットシーンやムービーが入るということもなく、ポンポンと非常にテンポよくバトルを行っていくことが可能です。