女性限定アート展に入場拒否された男性来場客 美術館への「差別訴訟」で勝訴
美術館内のアート展に入ろうとした男性客。性別を理由に入場を拒否されたため、美術館を訴えていたが…。
オーストラリアのアート展で、男性であることを理由に入場を拒否された男性客が、入場許可を求めて美術館を提訴。このたび裁判が開かれ、判決が下った。『BBC』『Art News』などが伝えている。
■「女性限定」のアート展
2023年4月1日、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州在住の男性が、タスマニア島にある現代アートで有名な美術館を訪れた。
男性は入場料金約3,500円を支払って館内へ。展示を見ながら進んでいたところ、『The Ladies Lounge(女性たちのラウンジ)』というアート展が目に留まった。
しかし中に入ろうすると、入場を拒否されてしまったという。このアート展は、入場者を女性に限定していたのだ。
■ピカソなどの作品見られず
同アート展内のスペースには、ピカソをはじめ、シドニー・ノーランなどの作品が展示されている。また事前予約が必要だが、一流のアートに囲まれながら一流の食事が味わえる場所だという。
同展を主催する女性は、男性を入場禁止にした理由を、「酒場で女性の飲酒が認められたのは1965年です。それまで女性はバーなどの入店が禁止され、隅に追いやられていました」「こうした歴史的背景を参照にして、偽善を指摘することが、本アート展の目的なのです」と、説明している。
入場を拒否された男性は、美術館の入場料をきちんと払っているのに、見られない展示があるのは不公平ではないかと、強く感じたという。
■「男性差別」訴え美術館を提訴
男性は今年に入ってから、性別を理由にした入場拒否は同州の差別禁止法に違反すると訴え、美術館および同展の主催者を提訴した。
3月19日に開かれた裁判では、男性がビデオリンク方式で出席し、「女性限定のサービスを直ちに中止し、男性でも入場を認めるべきです」と訴えた。
これに対し美術館側の代理人弁護士は、「男性を除外すること自体が、このアートの一部なのです」と説明。続けて、「タスマニアの法律上、社会的・経済的に不利な立場の人が、平等の権利を推進する目的で行う差別については、ある程度認められています」などと反論した。
■男性の主張が認定される
その後に複数回の審理を重ね、4月8日に判決が下された。裁判所は美術館に対し、当該アート展に男性の入場を命じる判決を言い渡した。男性の主張が全面的に認められた形だ。
裁判長はその理由を、「展内の有名作品を男性に見せないことで、どうやって目的を達成するのかが明確ではない」と説明した。
判決を受けて美術館の広報担当者は、「裁判所の判断には失望しています。現在対応を検討中です」などと、各社取材に語っている。
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(取材・文/Sirabee 編集部・宮 ちてら)