税関で発見された拳銃、とんでもない隠し場所にゾッとした… 「映画の世界かよ」とネット民驚愕

羽田空港の税関に展示された拳銃の隠し場所が「完全に映画の世界」と話題に。摘発事例の詳細をめぐり東京税関に話を聞くと、驚きの事実が…。

2024/04/03 05:30

■「そんな場所に隠すのか…」と驚きの連続

ポスト投稿主・ロゼ子さんが件の写真を撮影したのは、羽田空港第3ターミナル3階にある「情報ひろば」(税関広報展示室)でのこと。

発見時の心境について、ロゼ子さんは「海外に出国する前にたまたま長い時間ができたので、出発ロビーの税関コーナーに立ち寄りました。この展示を見つけた私自身もデイリー六法を使って勉強していたこともあり、勉強仲間に向けて『法に穴を空けた人がいる!』と共有したくなり、ポストしました」と振り返っている。

そこで、東京税関 羽田税関支署にロゼ子さんのポストを共有のうえ、取材を打診したところ「税関に興味を持って頂ける内容であればぜひ」と快諾を得られ、羽田空港へ向かうことに。

羽田税関

現地には「六法集に隠された拳銃」の他にも、「スニーカーの中敷きの下に隠された金塊」や「ぬいぐるみの内部に隠された覚醒剤」など、思わず目を疑う事例が多数展示されていた。

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「情報ひろば」にて展示されている事例について、東京税関の担当者は「大量の薬物の密輸を図った事案や、巧妙に隠匿した事案などを、適宜のタイミングで紹介・公開しています」「展示ついてはスペースの関係もあり、展示物更新の際に検討しています」と説明する。

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これらの事例も非常に気になるが…まずは、Xポストにあった摘発事例の詳細について尋ねてみたところ、「展示物は過去の摘発事例を元に再現し、作成したものです。こちらは相当昔の事案でもあり、詳細はお答えできません」との回答が得られた。

ポストを見た当初、記者は『デイリー六法』が平成26年(2014年)版である点を考慮し、2010年代に摘発された事例では…と推測したが、同時に前出の「違和感」が頭をよぎる。

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それは「現代(2010年代)の技術を用いればこの程度の偽装は難なく見破れるはずだが、持ち込んだ人物は予測できなかったのか?」という疑問であった。しかし前出の回答にあったように、こちらは数十年前の「昭和の時代」に摘発された事案が元であると判明し、納得した思いであった。

また『デイリー六法』が発行されたのは1991年(平成3年)からのことであり、同事案が摘発された時代に同書は存在しなかった。そのため当然、実際の隠匿に「同書は使用されていない」という点を強調しておきたい。

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なお、近年では類似事案として「厚みのある書籍の内部をくり抜いて覚醒剤を隠匿した事案」が摘発されており、そちらについては詳細が確認できた。

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2022年4月、南アフリカ共和国からの航空貨物から覚醒剤が発見されたケースで、その量はなんと約6kg。

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当時の末端価格にして約3億5,000万円にして、使用回数約20万回分にもなるボリュームである。


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■気づかぬうちに「運び屋」にされるケースも…

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「安全・安心な社会の実現」「適正かつ公平な関税等の徴収」「貿易円滑化の推進」という3つの使命を掲げ、迅速で円滑な通関と同時に、厳格な密輸取り締まりに、文字通り24時間365日取り組んでいるのが、税関という行政機関。

密輸に関しては、今回例に挙がった不正薬物や銃器のほか、爆発物や火薬類、化学剤などのテロ関連物資、金地金(きんじがね)、知的財産権を侵害する物品などの不正事犯の取り締まりを行なっているのだ。

今回の取材に際し、東京税関の担当者は「日本国内で押収された覚醒剤や大麻等の不正薬物の約9割は税関の摘発によるもので、全国の税関における不正薬物の年間押収量は8年連続で1トンを超え、依然として高止まりの状況が続いています」と語る。

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「厚い書籍の中に拳銃が隠されている」という光景を受け、ネット上には「映画のワンシーンみたい」といった声が多数上がっていたが、ある側面から見ると、これは危険な考えかもしれない。

…というのも、東京税関の担当者が「近年、自分自身の知らないうちに、薬物などの運び屋にされるケースが見受けられます」とも語っていたからだ。

例えば、SNS上で「タダで海外旅行ができて、お金を稼げるアルバイトがあるよ」といった投稿を発見し、甘い言葉に誘惑されて海外から荷物を運ぶ仕事を引き受けたところ、預かった荷物に薬物が隠されていた…というケース。

また、海外旅行先の現地で親しくなった人物から「日本に友人がいるので、荷物を持って行ってほしい」と頼まれたところ、預かった荷物に薬物が隠されていた…というケースも散見される。

恐らく、こうした運び屋となった(された)人物の多くが「こういった事案は遠い世界の出来事で、自分には関係がない」などと考えていたのではないだろうか。

担当者は「薬物の密輸は重大な犯罪で、諸外国によっては死刑が適用されるケースもあります。甘い誘いには決して乗らず、また安易に荷物を預からないことが重要です」と注意を喚起する。

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税関での取り締まりを効率的に実施するには、国民一人ひとりの情報や協力が重要となり、担当者は「外国から荷物を送りたいので、名前と住所を貸してほしいと頼まれた」「夜中に漁具も積まずに出航していく漁船がある」「近所の倉庫に見慣れない人物がいる」といったシチュエーションを例に挙げる。

そして「どのような些細なことでも構いません。密輸情報提供サイト(税関公式)、または密輸ダイヤル「0120-461-961」(シロイ・クロイ)に情報をお寄せ頂きますよう、よろしくお願いいたします」とも呼びかけていたのだ。

国際化が進む昨今においては「フィクション作品の話だと思った」「海外でしか起こらない事件と思った」という考えは非常に危ういもの。国際社会に生きる現代人として、国民一人ひとりが改めて危機意識を持つべきだろう。


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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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