福井で遭遇した標識、その読み方にギョッとした 初見殺しすぎる「3文字」が話題に…
福井県を流れる川の名称が「初見殺しすぎる」と話題に。「遠敷川」の由来をめぐり、地元の博物館に話を聞いた。
■誕生は1000年以上前に遡る
福井県を流れる「遠敷川」は「おにゅう川」と呼びます。ローマ字が無ければ読めません。特に「敷」を「にゅう」と読む発想にはなかなか至らない? pic.twitter.com/65FAoW9noV
— 滝原渡(道路標識調査ノート) (@cluesign) December 19, 2023
「遠敷」の歴史は古く、表記のバリエーションも非常に多いようだ。
若狭歴史博物館の担当者は「古代においては『小丹生(小丹)』の表記が見られ、平安時代の辞書『和名類聚抄』(わみょうるいじゅしょう)には『乎爾布』、同じく平安時代の法典『延喜式』(九条家本)には「ヲニフ」と訓じています」と説明する。
他にも747年(天平19年)の財産目録『大安寺伽藍縁起并流記資材帳』には「乎入郡」の表記が見られたり、戦国時代には一部で「中郡」とも呼ばれていたようだが、基本的には「遠敷郡」の表記が主流であるという。
担当者は「713年(和銅6年)の諸国郡郷名著好字令(しょこくぐんごうめいちょこうじれい)が出され、良い意味を持った文字、縁起の良い文字を使って、2文字で国や群などの名称を表すようになったことから『遠敷』となったのではないかと考えられています」と、命名の経緯について補足していた。しかし、なぜこの2文字を当てるようになったかまでは不明であるという。
■遠敷、めちゃくちゃ重要な土地だった
古代においては若狭国の国府が置かれていたとされ、若狭における中心地であったと考えられる遠敷郡。
若狭歴史博物館の担当者は「中世においては現在の遠敷にあたる地域で定期市も開かれており、賑わっていたと考えられます」「中世以来の港町である小浜湊(現・小浜市)も近く、また、現在の敦賀(現・福井県敦賀市)から宮津(現・京都府宮津市)へ抜ける丹後街道が通っており、そのほか、針畑越(はりはたごえ)と言われる、朽木(現・滋賀県高島市朽木)から京都方面へ抜ける街道もあり、交通の要衝でもありました」とも説明している。
これらの中世以来の街道は、近世以降も鯖街道と呼ばれるいくつかのルートの中に含まれているという。そして、前出の針畑越の道沿いに流れる川は「遠敷川」、一帯の谷は「遠敷谷」と呼ばれているのだ。
「遠敷谷」の由来については「滋賀県側の小入谷も隣接しているため、そこから名付けられている可能性がありますが、断定はしかねます」とも説明している。
こうした「変わった読み方の地名」の特殊性は、地元の人間ほど気付きにくいもの。普段気に留めていなかった地元の地名を調べてみると、新たな発見があるかもしれない。
■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)