旧ジャニーズ、エージェント契約の「落とし穴」 事務所がタレントのコントロールを…

来春、エージェント制を導入する旧ジャニーズ事務所。この制度が持つメリットと注意点を弁護士に聞いた。

2023/12/14 04:15

ジャニーズ事務所・スマイルアップ

8日、SMILE-UP.(スマイルアップ、旧:ジャニーズ事務所)が、所属タレントのマネージメントなどを行なう新会社の社名を発表した。来春から「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテインメント)」として始動する。

新会社では、エージェント制が導入されるが、エージェント制にはメリットとデメリットがあって…。

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■来春からエージェント制が導入

旧ジャニーズ事務所は、創業者・ジャニー喜多川氏の性加害問題を受けて、10月の記者会見で「スマイルアップ」に社名変更することを発表。その際、今後同社は被害者への補償のみを業務とし、所属タレントは新たに設立される会社に移籍すると明かしていた。

この会社こそ、今回発表された「スタートエンターテインメント」である。同社では、タレントが従来のマネジメント契約かエージェント契約か選択できる。来春から“ハイブリッド”な契約システムがどのように機能していくか注目が集まっている。

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■マネジメント契約との違いは…

新たに導入される「エージェント契約」とはどのようなものなのか。弁護士法人 永 総合法律事務所に所属する菅野正太弁護士に話を聞いた。

菅野弁護士は、「個別の契約内容はそれぞれ異なることがありますが…」と前置きして続ける。「マネジメント契約は、タレントとマネジメント会社との間で締結されます。一般的に、事務所がタレントに対する独占的なマネジメント権を有し、スケジュール管理、仕事の手配、メディア戦略、ブランディングなどタレントの様々な活動に対してコントロール権を有します。その代わり、タレントはマネジメント会社から自身の活動に応じた報酬の支払いを受けます。分かりやすく例えるのであれば、タレントはマネジメント会社という組織に属する社員のような立場に近いといえます」(菅野弁護士)。

エージェント契約も、タレントとマネジメント会社の間で締結されるところは同じだが、異なる点がある。菅野弁護士は、「マネジメント会社はあくまでタレントの窓口として、クライアントとの業務やギャラの交渉を代理、仲介するに過ぎません。したがって、タレント自身にスケジュールの管理や仕事の諾否が委ねられており、個人事業主としての色彩が強くなります」と説明する。

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■エージェント契約のメリット

エージェント契約を結ぶことで、タレントと事務所の関係はより対等に近いものになるという。タレントにとって、エージェント契約を結ぶメリットはこの点になるようだ。

菅野弁護士は、「エージェントとしての事務所が取ってきた仕事が自分に合わないと感じた場合は、自由に断ることができます。マネジメント契約よりもタレント個人の裁量が大きい中で活動することが可能です。また、支払われるギャラに関しても、事務所に対しては代理手数料などを支払うのみで足りるので、自身の取り分が大きくなることもメリットの一つといえるでしょう」と話す。

タレントは、より「自分がやりたい仕事」をしやすくなるということだ。ただ、ある種個人事業主になることで、大変な部分もある。

菅野弁護士は、「スケジュール管理や現場移動などは、自らで対処しなければなりません。自己責任が問われる部分が増えるのは、あえていうのであれば、デメリットともなるでしょう」と指摘する。

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■「タレントをコントロールしにくい」

事務所側が、エージェント契約によって得られる利点はあるのだろうか。菅野弁護士によれば、タレントの管理を省略可できるところにあるという。「マネジメント契約の場合、包括的にタレントを管理する必要があります。それに伴う費用、人員などは事務所で用意する必要が生じ、負担も大きいといえます」(菅野弁護士)。

スマイルアップは、デビューしたグループ、ソロで活動するタレント、デビュー前のジュニア(旧:ジャニーズJr.)とかなりの大所帯だ。エージェント契約を導入することで、タレントのマネジメントにかかる費用を削減できるかもしれない。

ただ、事務所からすると、以前よりタレントをコントロールするのは難しくなりそうだ。菅野弁護士からは、「知名度の高いタレントに事務所で独占的に活動してほしい、◯◯のイメージをつけるための仕事をしてほしいなど、事務所側が希望しても、エージェント契約ではそういった縛りをかけるのはなかなか難しいといえます」というコメントが寄せられている。

例えば、スマイルアップが、あるグループを恋愛ソングを歌う華やかな「王道アイドル」として売り込もうと提案しても、タレント本人が「海外に通用するような難易度の高いダンスナンバーをやりたい」と望んだ場合、タレント側の意向が通る可能性もあるということだ。

従来のマネジメント契約の考えに固執すると、事務所もタレントも、思わぬ「落とし穴」にハマりかねない。事務所とタレント双方がエージェント契約について理解を深める必要があるだろう。

2023年、スマイルアップにとって激動の1年になった。来年、エージェント制を導入することでどのように変わっていくのだろうか──。

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■執筆者プロフィール

斎藤聡人:1991年生まれ。『Sirabee』編集部記者。

某週刊誌の芸能記者を経て現職に。ジャニーズネタなど、芸能ニュースを中心に様々なジャンルを取材する。

チェーン店からローカル店まで様々な飲食店をめぐり、グルメ記事も手がける。仕事も兼ねた毎日のドラマ鑑賞が日課。

今期の推しは、『コタツがない家』(日本テレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人 取材協力/<a href="https://ei-law.jp/">弁護士法人 永 総合法律事務所・菅野正太弁護士)

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