70年前のエレベーター、何かがおかしい… 現代に受け継がれる「意外な数値」に驚き
意外と気になるエレベーターの「重量制限」だが、この数値はどのように定められているのだろうか。半数以上の人が「数値を誤解している」と判明した。
今から130年以上も前の1890年(明治23年)11月10日、東京・浅草に日本初の電動式エレベーターを設置。この出来事が由来で、11月10日は「エレベーターの日」と定められている。
我々の日常生活において、なくてはならない存在のひとつと言えるエレベーター。しかし、あまりに身近な存在ゆえに「じつはエレベーターのことをよく知らない」という人も少なくないのではなかろうか…。
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■「1人当たり」の重量、分かる?
エレベーターに「重量制限」があるのは誰もが知っているが、正確な数値を把握している人はごく少数派だろう。そこで今回は全国の10〜60代の男女975名を対象として、エレベーターが定める「1人当たりの重量」に関する意識調査アンケートを実施することに。
調査の結果、全体の46.3%が「65kg」と回答。次いで「60kg」が40.6%と多く、最も少ない回答は「55kg」(13.1%)であった。
そしてエレベーターの重量制限について語る際、同時に注目したいのが「海外規格との違い」である。欧米諸国は平均体重が日本より大きい(重い)ため、当然ながら日本とは異なる規格を設けているのだ。
■欧米との差分重量、分かる?
続く設問では、日本と欧米が定める「1人当たりの重量の差」について尋ねてみる。こちらの質問に対し、最も多い回答は「10kg」(46.5%)という結果に。その後は「15kg」(34.4%)、「5kg」(19.2%)と続く形になった。
続いては、エレベーターやエスカレーター、動く歩道の専業メーカー「フジテック株式会社」に詳しい話を聞いてみることに。その結果、記者の予想以上に「細かく分けられた数値」が明らかになったのだ…。
■ルールが決まった時期はなんと…
フジテック担当者は、それぞれの規格について「日本では建築基準法施行例 第百二十九条の六(1950年施行)にて、1人当たりの体重を65kgとして計算するように定められています」「海外でも同様に規格で定められており、ヨーロッパでは 75kg、アメリカでは 72.5kg となっています」と、説明している。
欧米間でも若干の差が生じているが、おおよそ「10kg」の差があると考えて良いだろう。…と、ここで気になったのが、日本における「1人当たりの体重65kg」という数値が、どのようにして定められたのかという点である。
厚生労働省に確認したところ、前出の規格が施行された1950年(昭和25年)における20歳以上の男性の平均体重は55kg前後。ここに女性が加わると、数値はより低くなる。
最新となる2019年(令和元年)のデータを参照すると、ここでようやく20歳以上の男性の平均体重が65kg前後に到達。しかしもちろん、女性の体重数値を加えると数値は減少する。
データとして改めて見ると、「1人当たりの体重65kg」の根拠に関する謎は、深まるばかりである…。こちらの疑問について、国土交通省の住宅局 参事官建築企画担当付に取材を打診したのだが、70年以上前に制定された数値ということもあり、詳細は不明とのこと。
しかし担当者との会話を振り返ると、まずエレベーター内の「総重量」から出発し、その数値を想定される乗員数で割った際、最も現実的な数値で、切りの良い存在が「65kg」だったのでは…という印象を受けた。
なお、日本人の平均体重は70年前と比較して大きく増加しているが、エレベーターにおける「1人当たりの重量」を改定する予定等はないという。
■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
対象:全国10代~60代男女975名 (有効回答数)