タグボート転覆で海底30メートルから救助された男性 10年後にダイバーに転身
転覆したタグボートから救出された男性が、10年後にダイバーになったきっかけには、すざましいストーリーがあった。
タグボートで働いていた男性が、船の転覆で海底に閉じ込められた。救助された男性が10年後にダイバーになったエピソードを『The Guardian』が伝えている。
■タグボートが転覆
ナイジェリア沖で石油タンカーを支援するタグボートの乗組員だったアリソンさん(当時29)は、休暇を控えて自宅に戻ることを楽しみにしていた。2013年5月26日、この日も調理の仕事につく前に、身支度のためトイレに向かったという。
すると突然衝撃を感じ、タグボート内に水が入ってきた。高波を受けて転覆してしまったのだ。
船は1分から2分で海底に到達し、突然止まった。アリソンさんはパニックになりながら部屋に入ると、プロペラが天井に、操縦桿が床にあり、ボートが完全にひっくり返っているのを目撃する。
その部屋は第2操縦室で、客室ドアが閉まっていたため、ある程度で水の流入が止まったという。しかし、真っ暗で静まり返っていた。
■エアポケット間を移動
アリソンさんは第2操縦室で懐中電灯を見つけると、エアポケットで息継ぎをしながら部屋の中を移動した。すると、これまで聞こえていた同僚の声が聞こえなくなったことに気づいた。
第2操縦室は食堂や冷却室にもつながっているため、アリソンさんは移動を試みることに。しかし食堂の方向へ進むほどエアポケットは少なくなり、食堂は水に浸かってしまったことをすぐに悟った。同時に、同僚たちは助からなかったと感じたのだという。
その後、水中を探索していると一つのカバンを見つけ、サバ缶、コーラ、作業服が入っていた。食糧は確保できたことから、続いていかだを作り、体温を奪われないようじっと耐え忍んだそうだ。
■3日後に救助
アリソンさんは、転覆した船の中でサバ缶とコーラで飢えをしのぎ、体力を温存していた。転覆からどれくらい時間が経ったのかわからないまま、海底30メートルの闇の中で家族を思い神に祈りをささげていると、潜水ダイバーの灯りが漏れているのが見えたという。
ダイバーに近づこうとして潜ったが、息が続かずに苦戦。するとダイバーがアリソンさんの手を照らし、ようやく生存が確認された。転覆から救助まで、すでに3日が経過していた。
■ダイバーへの道
アリソンさんはこの事故の翌年にも、運転中に川に転落するアクシデントを起こしてしまう。同乗した友人を潜って助けた彼は、ダイバーを志すことを決心した。兄や妻からは反対にあい、これが原因で妻とは別居になってしまったという。
しかし、アリソンさんの意志は固かった。転覆事故から10年を経て、現在は石油タンカーやガス施設の修理を行う特殊ダイバーとして働いている。ダイビング船に乗り、「最大50メートルまで潜れます」と話す。
「水中での体験はいろいろな意味で人生を変えた」というアリソンさんは、パートナーとの間に3人の子供も生まれ、今は平穏な人生を歩んでいる。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)