飛行機利用を拒否した気候研究家が解雇 環境保護を考えたのに…
二酸化炭素排除問題の調査で訪れたパプアニューギニアから、急遽飛行機で帰国を命じられた気候研究家。環境保護のためそれを拒否すると、雇い主から解雇されたことが物議を醸している。
気候変動調査のためパプアニューギニアにいた気候研究家の男性が、飛行機での帰国を拒否したという理由で解雇された。『The Guardian』が報じている。
■気候変動調査
気候研究家のジャンルカ・グリマルダさんは、気候変動とグローバリゼーションが島の住民に及ぼす影響を調べるため、パプアニューギニア沖のブーゲンビルという島にいた。
6ヶ月の調査が終了したため貨物船でドイツに帰国する予定だったところ、突然、雇用主であるキール世界経済研究所(IfW)から飛行機で帰国するよう命じられたという。
しかし二酸化炭素排出を減少する側の立場から、それを拒否。すると、指示に従わなかったとして解雇されてしまったという。
■二酸化炭素減少の約束
ジャンルカさんは、気候変動に立ち向かうためここ10年間は飛行機を利用していない。今回の調査で出会った多くの地元住民には、気候変動による洪水や自然災害に巻き込まれた人も多い。
そのため地元住民に、「帰国の際も二酸化炭素を最小限に抑える」と約束していたのだという。キール世界経済研究所は、ジャンルカさんが貨物船で帰国を予定していることを知りながら2週間前に期日を言い渡し、一方的に契約を解除したのだった。
■生態系を破壊する行為
ジャンルカさんはメディアに対し、「キール世界経済研究所は、地球の生態系が破壊に近づいていることを無視している」と語った。
飛行機と貨物船を利用した場合の二酸化炭素排出の差は4.5トンに相当し、これは人間1人あたりが年間に排出する二酸化炭素量の約2倍に当たるという。
ジャンルカさんは、研究所の解任決定が法的に正当化されていることが問題として、訴訟を起こす考えだ。
■雇用主の見解は…
一方でキール世界経済研究所の広報担当者は、「一般的に、研究所はスタッフに気候に優しい旅行をするよう奨励し、サポートしています」と回答している。
さらに「私たちは、ドイツおよび他の欧州連合(EU諸国)において、可能な限り飛行機移動を回避する取り組みを行っています」「また、気候保護プロジェクトを通じて、フライトの排出量の相殺にも貢献しています」との見解を示した。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)