「渋谷ハロウィン」は今年もカオス? 現役コスプレイヤーたちが向ける冷たい目線
渋谷ハロウィンが今年も幕開け。渋谷区が「こないで」とアナウンスする異例事態だが、果たしてどんな状況が待っているのか。
「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません。」──。渋谷区が掲出した駅前看板に書かれたメッセージだ。28日、いよいよ渋谷に一年に一回のコスプレを楽しむ若者たちが集まるが、今年も冷ややかな目線で見ているのが現役コスプレイヤーたちだ。
■センター街はカオスな状況
ゾンビ、囚人、ミニスカポリス、バニーガール…amazonで売っているようなライトなコスプレ衣装に身を包み、街中で交流する渋谷ハロウィン。目抜き通りである「渋谷センター街」は、満員電車のように人が殺到し、あらゆる場所でスマホによる撮影が行われている。
警備スタッフによる人流整理や、路上飲酒行為の警告なども行われているが、毎年渋谷区が呼びかける「渋谷にこないで」のアナウンスは若者たちには届いていない状況だ。
■同じ「コスプレ」で語られたくない
現役のコスプレイヤーたちはこの状況をどう見ているのか。渋谷区に住む20代の女性コスプレイヤーAさんは、X(旧・Twitter)で7万近いフォロワーを抱えている人気レイヤーの一人。渋谷ハロウィンについては厳しい目線を持っている。
「一般的なコスプレイヤーは、露出のルールや撮影ルールを守って、かつ参加費を払ってコスプレイベントで楽しんでいます。一方、渋谷は酒を飲んだり、ゴミを捨てたり、ナンパ集団が待機していたり、カオスな状況。そこでコスをしたいとは1%も思えません。同じ『コスプレ』というジャンルで見られることが凄く嫌です」(Aさん)。
■電車の中でゾンビメイク
同じく渋谷区に住む40代のコスプレカメラマンBさんも同意見だ。
「昨年、渋谷ハロウィンに一度行きましたが、みなこの日だけ“コスプレイヤー(仮)”になりたい子ばかりで、地方から来ている人が多かった。着替える場所がないんで自宅から着こんで来た子もいました。電車の中でゾンビコスプレしたまま意気揚々と自撮りしている若者なんかもいて、年配の乗客は引いてましたね。通常のコスプレイベントでは血のりや女装、過度な露出など、不快になるコスは禁止されていますが、一日限りの渋谷ではそのルールを守る人はほぼいない印象」(Bさん)。
■渋谷だけなぜこの状況になるのか
Aさんはさらに続ける。
「仮に通常のコスプレイベントでルールを守らない行為があると、即炎上、交流の中心であるXアカウントを消さないといけないような状況になるでしょうね。でも渋谷にいる子たちは、そんな怖さも、晒されることもない。ある意味無敵ですからね…」(Aさん)。
この日は、池袋や蒲田でハロウィンコスプレイベントが開催されているが、いずれもコスプレ界に精通したスタッフや関係者が企画しているもので、池袋ではコスプレパフォーマンスステージやパレード、蒲田ではスタンプラリーや、仮装フォトコンテストなど、コスプレ文化の発信、さらには地域起こし的側面が強い。
一方の渋谷は、区が「来ないで欲しい」と呼びかけるほど真逆の存在にある。路上飲酒禁止、喫煙所閉鎖、ハチ公広場閉鎖、そして警備スタッフや警察の巡回と区もあらゆる手を打っているが、やっぱり今年も「注目を浴びたい」多くの若者が渋谷にやってきそうである…。
■執筆者プロフィール
キモカメコ佐藤:1982年東京生まれ。『sirabee』編集部取材担当デスク。
中学1年で物理部に入部して以降秋葉原に通い、大学卒業後は出版社経て2012年より秋葉原の情報マガジン『ラジ館』(後に『1UP』へ名称変更)編集記者。秋葉原の100店舗以上を取材し、『ねとらぼ』経て現職。コスプレ、メイドといったオタクジャンル、アキバカルチャーからスポーツまで精力的に取材しつつ、中年独身ひとり暮らしを謳歌する。
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(取材・文/Sirabee 編集部・キモカメコ 佐藤)