糖尿病性潰瘍の治療に絶滅危惧サルの糞が有効 イギリスで年間2千億円近く医療費節約に
絶滅危惧サルの糞から、糖尿病の症状を改善するウイルスが発見された。イギリスにおける年間1,800億円の医療費の節約になると期待されている。
絶滅危惧サルの糞が、糖尿病の合併症である潰瘍に効果を示したという。治療に適応できれば、イギリスにおいて年間約10億ポンド(約1,800億円)の医療費の節約になるという研究を『The University of Sheffield』や『DailyMail』が伝えている。
■糖尿病の治療にサルの糞
絶滅危惧種であるギニアヒヒやキツネザルなどサルの糞中にあるウイルスが、糖尿病性足潰瘍を治療する能力があると、イギリスのシェフィールド大学の研究者が発表した。
糖尿病患者は、血糖値の調節ができなくなると腎臓障害、眼症状(網膜症)、動脈硬化症などの合併症を引き起こす。足潰瘍も糖尿病患者がよく患う合併症で、悪化すると足が腐ってしまう。
細菌を防御する免疫力が極度に低い糖尿病患者は、抗生物質を投与しても足潰瘍の進行を止めるのは難しい。また、細菌が抗生物質の耐性をつけてしまい、治療が困難になるケースは少なくない。
■天然の抗生物質
絶滅危惧種の糞に含まれていたウイルスは、バクテリオファージというもの。一般的に細菌(バクテリア)を食べる(ファージ)生物として認識され、抗生物質が効かない細菌を食べて殺傷する能力がある。
研究者らはこれまでに、イギリス・ヨークシャー野生動物公園で飼育されている希少種や絶滅危惧種に指定されている450頭の糞を検査。ギニアヒヒをはじめキツネザル、ビサヤ豚やビントロングの糞中に有用な細菌を特定したという。
天然由来のバクテリオファージの発見により、足潰瘍の患者への治療の突破口になると考えられている。
■医療費を年間約1,800億円カット
イギリスでは、糖尿病性の足潰瘍の悪化により、足やつま先を切除する人は年間約7,000人にも上るという。この治療にかかる約10億ポンド(約1,800億円)の施術代は、イギリス国民健康保険サービス(NHS)が負担している。
バクテリオファージを活用した治療は、敗血症治療や糖尿病性足感染症に適応されてきた。しかし環境中に存在するウイルスを絶滅危惧種の排泄物から取り出し、治療の広い可能性を見いだしたのは今回が初めてである。
この発見により抗菌薬が生成できれば、イギリスにおける国の医療費負担の大きな削減につながると期待されている。
■研究は進行中
ヨークシャー野生動物公園のデレクターは、「このような画期的なプロジェクトに参加できることに興奮しています」「この研究が、トラウマになるような治療や切断を受ける患者を助けることができる」と話す。
バクテリオファージによる糖尿病性足潰瘍治療の効果を調べる臨床試験には至っていないが、現段階ではさまざまな供給源からファージを発見する研究が進行中である。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)