英国で「ブルセラ症」が犬から人間へ感染報告 今後増加する危険性ありか
人間には感染しないといわれている犬の病気にかかった2例が、イギリスで報告された。
本来、人間には感染しないとされていた犬の病気に感染したケースが、2例起きているという。犬の病気のなかでも珍しいとされる「ブルセラ症」について、『NewsWeek』『INDEPENDENT』がレポートした。
■人畜共通感染症「ブルセラ症」
犬の病気「ブルセラ症」は、1966年にアメリカで初めて見つかった細菌感染症である。流産したビーグル犬から発見されたこの細菌は、猫やキツネなど他の肉食動物にも感染することがわかっている。
「ブルセラ症」は、感染した個体の体液に接触することで感染する。犬同士の感染は、交尾を介して起こるのが一般的だが、子宮内や出産時あるいは母乳によって子犬に感染することもあるという。
「ブルセラ症」に感染した動物は、歩行が困難になったり不妊の症状を引き起こす。難病と言われており、治療法がないため感染個体は殺傷処分されている。
■人間に感染する経路とは?
この細菌は、人間に感染することはめったにない。その理由は、感染個体の体液が直接口に入る、もしくは傷口などに接触でもしない限り、感染に至らないからだ。
最も可能性の高い感染経路は、犬のお産を手伝った時が考えられる。可能性は低いものの、感染した犬の糞尿に触れ、何らかの理由で体内に細菌が入ってしまえば、人間にも感染するリスクはあるという。
今回報告されている2件のうち、一人は獣医師関係者で、もう一人が症状から臨床検査で判明したケースだった。
■感染して現れる症状
人間が「ブルセラ症」に感染すると発熱し、頭痛や体重減少といった症状が現れる。重篤なケースでは、髄膜炎、敗血症や関節炎をはじめ、免疫を低下させるギランバレー症候群などを引き起こす。
これまでに人間から人間への感染は確認されていないが、輸血を介して感染する可能性はゼロではないらしい。ただし、人間への感染による死亡例は過去に1件もない。感染した場合でも、抗生物質を服用すれば完治する病気である。
■増えつつある人間への感染
そんななかイギリスで昨年、初めて犬から「ブルセラ病」に感染した女性の症例が報告された。女性は5匹の飼い犬をすべてを、安楽死せざるを得なかったそうだ。
ヒト動物感染症リスク監視機構(HAIRS)が発表した報告書によれば、この病気の人体へのリスクは低いというものだったが、犬の症例数は2020年のわずか9例から、今年はすでに91例にまで増加しているという。
イギリスで発見された症例の多くは、東ヨーロッパからの輸入種だった。輸入時の検査を徹底するとともに、獣医師へ適切な保護具着用を呼び掛けている。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)