美術館の依頼料1千万円を持ち逃げしたアーティスト 「契約違反も仕事の一部」と主張
この行動もアートの一種? アーティストが美術家の依頼に対して空の額縁を提出し、そこには「持ち逃げ」というタイトルが…。
美術館から提供された多額の資金をまるごと着服し、代わりに何も入っていない空の額縁を提出したデンマーク人のアーティスト。裁判所から資金を返還するよう命じられた後も、無視し続けているという。
『The Guardian』『NDTV』などの海外メディアが報じた。
■リアル紙幣を用いたアート作品
デンマークでコンセプチュアル・アートを制作するイェンス・ハーニングさんは、オールボーにあるクンステン近代美術館から、過去の作品2点を再現するよう依頼を受けていた。
「権力と不平等」をテーマに扱うハーニングさんは、過去に『デンマークの平均収入』という作品で実物のクローネ紙幣を、またオーストリアの収入に関する作品ではユーロ紙幣を用いていたという。
■美術館の資金を「持ち逃げ」
美術館は、作品を再現するために53万2,000クローネ(約1,100万円)と、4万クローネ(約85万円)のアーティスト料をハーニングさんに提供した。
しかし、美術館のスタッフがハーニングさんから納品された作品を開梱すると、そこには「Take the Money and Run(お金を持ち逃げする)」というタイトルの、空の額縁が2枚あったという。
■裁判所の判断は…
始めから作品を再現するつもりなどなかったかのような態度に、怒った美術館は資金の返還を要求。しかしハーニングさんがこれを拒否したため、法的措置に踏み切った。
今月になり、コペンハーゲンの裁判所はハーニングさんに対して借りたお金を返すよう命じ、その一方で、空のフレームに対してもギャラは支払われるべきであるとの判断を下した。
■契約違反も仕事の一部?
クンステン美術館のラッセ・アンダーソンさんは、メディアの取材に対して「私たちは資金の使い方を慎重に考えねばならず、無駄にする余裕はありません」と述べた。
なおハーニングさんはデンマークのラジオで「これは盗難ではありません。契約違反であり、契約を違反することも仕事の一部なのです」と語っている。
さらに続けて「私と同じような悲惨な労働環境にある人々にも、同じようにすることを勧めます。できる限りのものを掴んで、打ち負かしてください」と主張した。
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(文/Sirabee 編集部・びやじま)