ブタの体内で人間の腎臓を作る研究結果が発表 移植用の臓器開発に一歩前進

中国の科学者たちによる研究チームが、ブタの体内で作る腎臓の研究に成功した。

豚・ブタ・養豚場

腎臓や肝臓など、ヒト臓器をブタの胚から生成することを目指した研究の成果に、注目が集まっている。科学誌『セル・ステム・セル』にも掲載された画期的な研究を、『CNN』や『 The Business Standard』が取り上げた。


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■ブタでヒトの臓器を増殖

中国科学院広州生物医学研究所で、ミゲル・エステバン氏が主任として率いる中国の研究チームが、「世界で初めてブタを使ってヒトの臓器を育てることに成功した」と発表した。

同研究所は5年前からこの研究に着手しており、個々の患者の細胞から臓器を複製することを最終目標としている。

ブタは保育器として起用しており、拒絶反応のリスクを大幅に軽減できるのだという。しかし、それには何年もかかり複雑なプロセスになる可能性があると、研究書の著者たちは説明している。

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■腎臓複製の手掛かりを発見

科学者たちは、ブタの胚からヒトの細胞でできた腎臓を作るために、まずは遺伝子操作でブタの胚の腎臓を作る遺伝子を抹消した。次にヒトの幹細胞を初期胚細胞に似せてブタの胚に入れる。このプロセスを経ることで、ヒトとブタの細胞が共存できる条件が整う。

6~7日後に発育中の胚を代理母ブタに移植すると、28日後にはヒト化腎臓は正常な構造と尿細管形成を始め、成長していることが確認されたという。

このヒト化腎臓は結果的に未発達であったものの、成熟した腎臓を作ることが可能かもしれないという大きな手掛かりが見つかった。


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■倫理的配慮への懸念

この研究には、倫理的配慮に対する懸念もささやかれている。ブタを代理母として体内で臓器を複製するという行為は、動物保護の観点だけでなく、ヒトの細胞がブタの他の臓器や脳に与える影響が心配されるのだ。

エステバン氏は「ヒトの細胞が他の臓器などに多く混入し、母体が出産まで生存した場合が一番問題となる」と話す。これまでの研究では、生殖細胞など種の根源を変化させてしまう危険性はないとしながらも、慎重に研究を進めていきたいと言及した。


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■臓器複製は実現の可能性は…

人間の病気治療のため臓器を移植する方法については、現在2つの研究が進められているという。一つは、ブタの腎臓を人間に移植するという従来の移植技術を引用したもの。

もう一つが、今回の研究であるブタを母体として、ヒトの細胞で作られた腎臓を生成する方法である。

前者は移植された人間が脳死状態だったため、機能的に十分か否かの判断は難しいのが現状だ。いずれにしても、この分野の研究は初期段階であり、臨床試験への道筋は長いと専門家は指摘する。

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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子

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