『盆ギリ恋歌』がサザン・オールスターズ45周年にふさわしい理由とは 古きよき令和の夏
サザンオールスターズ45周年『盆ギリ恋歌』を、曲・詞・パフォーマンス・盆・祭り・性愛・日本文化の観点から考察。
■妖しい世界観と王道ポップスの融合
同曲は、妖しい雰囲気を漂わせる楽曲でもあり、サザンらしい尖った曲でもある。同曲は、マニアックになりがちなサザンの妖しく尖った楽曲を、ハイテンポな王道ポップスに仕上げている点が新しい。
『盆ギリ恋歌』は、ハイテンポな王道ポップスと、妖しく尖った楽曲構成と世界観を両立させた、まさにサザン45周年に相応しい数十年来の完成された楽曲なのだ。
■祭りと性愛
また同曲は、「亡霊たちのお祭り騒ぎ」にサザンらしく性愛要素も入れている。お祭りと性愛はサザンらしいだけでなく、日本らしい。
社会学者の宮台真司氏がお祭りと性愛の伝統的な結びつきを、かねてより指摘している。普段は奥ゆかしい日本人だからこそ、「ハレの日」に性愛が結びつく。
お祭りの日の性愛こそ、「みんなに内緒で誰もがやってる」日本の性愛なのだ。ここに同曲は、盆、祭り、性愛、妖怪、仏教までもが見事に結びついた、日本の国民的ソングとなる。
■Mステでの最高の演出
盆踊りパフォーマンスも派手なもので、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演時は、浴衣をはだけさせ、上半身下着姿でダンサーが踊り狂った。
曲のラストに扇子を扇ぎながら、踊り歌唱する桑田の姿は、日本の夏の伝統を再生させる呪術師の如く。
『NHK MUSIC SPECIAL』(NHK総合)では演出は抑えめとなったが、今年のサザンは『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に華々しく出演するのだろうか。『盆ギリ恋歌』で毎年紅白を締めることで、同曲が令和の『まつり』となっても面白いかもしれない。
■古きよき令和の夏
既に音楽番組に出演した後で発表される第3弾の新曲が、秋・冬ソングとなり、もっと国民の望む王道サザンの可能性もある。
いずれにせよ『盆ギリ恋唄』は日本の伝統的な夏を見事に表した作品であり、中途半端な少子化政策よりは、同曲が広まることで古き良き日本の再生を望みたくなる程の作品だろう。
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(文/メディア評論家・宮室 信洋)