教習所の“鬼教官”が激減、一体なぜ… 元教官が明かす「令和の指導方針」に驚き
かつておなじみだった教習所の「鬼教官」。近年、そうした指導は激減しているようで…。
夏休みを利用して運転免許を取る学生も多い。教習所の教官から運転のイロハを教わることだろう。かつては、厳しい指導をする「鬼教官」もいたようだが、現在はそうした教官は激減している。
令和の教習所では、どんな指導をするのか取材した。
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■昭和に代表的な「鬼教官」
かつて、教習所の教官から厳しい言葉を浴びることも多かったようだ。50代男性のAさんも、教習所に通っていた当時をこう振り返る。
「私はマニュアル(MT)免許を取ったのですが、教官は怖い人が多かったです。『クラッチ踏むの遅ぇんだよ!』と怒鳴られ、坂道発進で何度もエンストしてしまった際は『何回言えば分かるんだよ!』と叱られ、落ち込んだこともありました。いま、20代の息子が教習場に通っているのでその話をしたら、『そんな人いないよ』と言われたので驚きましたよ」(Aさん)。
Aさんのように、昭和の教習所で「厳しい指導」を体感した人も少なくないのでは。ただ、平成、令和と時代が変わるにつれて「鬼教官」は耳にしなくなった。
■教習場も「褒めて伸ばす」?
昨今、会社で上司が部下を指導する際、厳しく叱りつける行為は「パワハラ」になるリスクもあるため、褒めて伸ばす指導が推奨されがち。教習所も、そうした教え方に変えているのだろうか。
全国47都道府県指定自動車教習所で構成され、自動車教習水準の向上や法定講習などを行う一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会に問い合わせた。同団体からは、「個々の教習所での詳細な教習内容に関しては、把握しておりません」という回答が。
そこで、以前教習所で働いていた経験のあるBさんに取材を敢行することに。その結果、令和の教習所の「裏側」が明らかになったのだ。
■“鬼教官”が減った背景
Bさんは、かつて厳しい指導があったことは認めつつ、その理由をこう話す。
「教官もいたずらに教習生を脅かそうと思っているわけではありません。車の運転は、一歩間違えれば命を落とす危険と隣り合わせです。限られた時間内で知識や運転技術を教える必要もあるので、教習生の理解度が低い場合は少々厳しく注意することもあったかもしれません。でも、それは免許を取ってから事故を起こさないよう、正しい技術を身に付けて欲しいと思う一心によるものなんですよ」(Bさん)。
教える側も熱意があるからこそ、時に厳しい言葉も飛び出したのだろう。ただ、時代が変わるにつれてそうした指導も変わりつつある。
「少子化等の影響で、年々教習生は減少しています。教習所側は少しでも多くの教習生を獲得するため、サービス、つまり教え方を重視するようになりました。ネットの口コミを見て、どの教習所にするか決める人も多いです。その際、『教官は優しいか』も判断基準の一つになるようです。昔のように、厳しく指導して、口コミに『ここの教官は怖い』と書かれたら、敬遠してしまう人も出かねません」(Bさん)。
“鬼教官”が減ったのは、こうした背景があったのだろう。
■令和の指導で気を付けること
令和の教習所では、どんな点を意識しているのだろうか。Bさんは、「教習所によって違いはある」と前置きしつつこう続ける。
「教習生をバインダーで叩くなど、暴力は絶対NGです。あとは、『きみ、◯◯大学なのにこんなことも分からないの?』『◯◯出身の人はこれだから…』など、運転と関係のない教習生の出自を持ち出さないようにしていました。注意する時も、『ここは良かったけど、こういうところができてなかった』と何か褒めた上で改善点を指摘するよう心がけていましたね」(前出・Bさん)。
教え方は変わっても、基本的な交通ルール、運転技術を身に付けることに変わりない。この夏、免許を取る人は教習場で技術を学び、安全運転を心がけてほしい。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)