市役所職員が明かした“カスハラ”にショック 「利用者がSNSで女性職員に…」
今年4月、佐賀市役所の職員が付ける名札がフルネーム→名字のみに。背景には「カスハラ」があったようで…。
近年、飲食店や百貨店等で客の店員に対する常軌を逸した言動「カスタマーハラスメント」が問題視されている。各社、様々な対策を講じているが、佐賀市役所では今春から名札の表記をフルネームから名字のみに変更した。
名札を変えたのには、「意外な裏側」があって…。
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■名札を変える企業が増えている
「カスハラ」対策の一つとして、名札を変えるケースが増えている。従業員のプライバシーを守り、働きやすい環境にするためだ。
タリーズコーヒーは、昨年5月から従業員の名札をイニシャル表記に変更。今年4月には、国土交通省がバスやタクシーの車内で義務付けていた運転手の氏名掲示を廃止すると発表した。
佐賀市役所では、今年4月から職員の名札の表記をフルネームから名字のみに変更したという。自治体にも「名札変更」の動きが進んでいる背景を探るため、佐賀市役所に取材を敢行した。
■利用者にSNSを見られて…
佐賀市役所の人事課係長・大坪正和さんによれば、同所の職員は2013年から顔写真とフルネーム表記の名札を首から下げていたという。10年間、フルネームの名札を付けていたが、2020年の議会で「職員のプライバシーを守ったほうがいい」という声もあがったそうだ。
その頃、こんな問題が起きていて…。
「利用者の方に職員の名前をSNSで検索され、窓口で『この前、あなた○○に行ってたんでしょ?』と言われた職員がいたんです。他にも、利用者からSNSでダイレクトメッセージを送られた職員もおり、特に若い女性職員の間で身の危険を感じる声があがっていました」(大坪さん)。
職員からすれば、利用者に監視されているように感じたことだろう。大坪さんは、「職員のSNSを禁止させるのは違います。安心して働ける職場にしたいと考えたんです」と、SNSの問題を機に対策に乗り出したと振り返る。
■職員からは「安心した」という声
21年9月より、まずは不特定多数の市民に対応する6部署で名札を変更。顔写真、所属、名字とふりがなを記載したものになったという。写真上が以前の名札、下が変更後のものだ。
大坪さんは、「利用者の方から特に指摘がなかったこと、他の職員からも『同じようにしてほしい』という要望があったことを受けて、今年4月から全部署に広げました」と話す。
1年半かけて、新しい名札が完全に導入されたのだ。フルネーム表記をやめたことに対する職員の反応はというと…。
「名札を見せるのに抵抗がなくなった職員が多いようです。もちろん、尋ねられたらフルネームを名乗りますし、フルネーム表記しなければならない仕事もあります。ただ、不特定多数の人にフルネームの名札を見せる必要はありません。窓口でも、『○○課の○○(名字)』というのが分かれば、誰が担当したか把握できますからね」(前出・大坪さん)。
「カスハラ」対策も大切だが、客の意識も変える必要がある。飲食店や企業のスタッフも一人の人間であることを忘れず、常識から外れた言動は謹んでほしい。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)