ジェンダーレス「スク水」導入校が急増 販売元が明かす開発の裏側が熱すぎた…
LGBTQにも対応した「男女共用セパレーツ水着」を導入する学校が急増。気になる生徒の反応は…。
7月に入って暑くなり、プールの授業に精を出す子供も多いことだろう。以前は学校のプールで身に付ける水着といえば、競泳水着タイプのスクール水着が定番だった。
だが、近年は男女共身体を隠すマリンルック調の“ジェンダーレス水着”を導入する学校が増えている。この水着ができるまでには、開発者の地道な努力があったようで…。
■“ジェンダーレス水着”を採用する学校も
「ジェンダーレス」にも対応した画期的水着の正式名称は、「男女共用セパレーツ水着」。長袖の上着とハーフパンツから成るもので、主に小中学生が対象だ。
近年、制服でも男女共用のデザインを導入する学校も見受けられるなど、LGBTQ(性的少数者)への関心が高まっている。「セパレーツ水着」は昨年テスト販売を始め、採用する学校が増加中。
件の水着はいかにして誕生したのだろうか。販売元で、水着用品を企画、製造するフットマーク株式会社に取材を敢行した。
■開発までの裏側
フットマーク株式会社の担当者によれば、4~5年前に学校内のジェンダー問題を耳にしたことが開発のきっかけだったという。
「学校水着を扱う小売店から、『トランスジェンダーの生徒がいるので、その生徒が着用できる水着はないか』というお問合せが年に3~4件ありました。当時は、シャインガード(長袖のラッシュガードタイプ)と水着を合わせた、肌の露出が少ない組み合わせをご紹介していました。ただ、学校の先生からジェンダー問題に配慮されていることを聞くたびに、社内でも、専用の水着を発売してはどうかという声があがるようになったんです」(担当者)。
今までにないコンセプトを持つ商品だったこともあり、開発に至るまで時間を要した。開発に着手したのは、社内で声があがってから2年後の2021年8月だったという。
前出の担当者は、「商品化が実現した背景には、一人の営業担当者が声をあげ続けたことがあります。その社員は、全国の販売店や問屋、学校から性別の不一致で水着選びに困っている生徒さんや先生方の声を聞き、この悩みを商品で解決したいと考えていました。ようやく、そうした悩みが解決できる製品を生徒さんへお届けできたことは、製造業を生業とする者にとって最大の喜びです」と、話す。
「水着選びで悩む生徒の役に立ちたい」──。そんな現場の社員の声が、たくさんの人の心を動かしたのだ。水着の開発にこれほど熱い裏側があったとは…。
■多様な機能に目を疑う…
ジェンダーレスに対応した水着ではあるものの、商品名にそうしたワードは入っていない。
その理由を尋ねたところ、「購入する際は手に取りやすいよう商品名に配慮しました。社内で何度も検討を重ね、あえてジェンダーレスという言葉は商品名に入れず、誰もが手に取りやすいよう『男女共用セパレーツ水着』としています」(前出・担当者)という回答が。
じっくり時間をかけて開発したとあって、多様な機能を搭載しているようだ。しかし素人目には「泳ぎにくそう」に映る。
「着用中、体の線を気にせず済むよう、ゆったりしたシルエットや体の線を拾わない素材を採用しました。泳ぎを妨げないよう、必要な部位はフィットさせ、お尻周りはゆったりさせるなど機能と快適さの両立を図っています。一方で、ゆったりした形ゆえ、生地面積の広い水着では水を吸って重くなるため、水着の生地に上下とも撥水加工を施しています。また、上着の裾がめくれにくいようパンツの腰紐で上着と固定したり、パンツの左右に空気の抜け穴を設けて水中での膨らみを防止するなど、様々な工夫を盛り込みました」(前出・担当者)。
■気になる生徒の反応は…
現在、およそ300校で採用しているとのこと(フットマークの出荷数ベースによる推測値)。実際、導入した学校の教師や生徒の反応が気になるところだ。
こちらの疑問をぶつけたところ、前出の担当者からは「着用した生徒達からは『水着姿が気にならず、授業に集中できた』『水中でも泳ぎやすかった』『肌や体毛が隠せて日焼け防止もできてよかった』といった声をいただいています」(前出・担当者)という回答が寄せられている。
性的少数者に限らず、人前で肌をさらけ出すことに抵抗を感じる生徒も少なくないはず。上下とも肌を隠すデザインに安心できるのかもしれない。
“ジェンダーレス水着”を導入する学校が増えれば、多くの子供達の救いになりそうだ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)