大学で20年続く研究事業を用務員が水の泡に 警報音に苛立ちブレーカー落とす
工科大学が研究のため、摂氏マイナス80℃で保存していた細胞培養やサンプル。用務員は「警報音がうるさい」という理由で、ブレーカーを落としてしまった。
アメリカ・ニューヨーク州の工科大学で、細胞学に関する一大研究事業が長年にわたり続けられていた。しかしそれが、1人の用務員の軽率な行為により、すべて水の泡と化してしまったという。『WSIL-TV』『TRI-CITY HERALD』などが報じた。
■警報音を絶つためブレーカーを
あってはならない「事故」の話題が伝えられたのは、ニューヨーク州オールバニーの郊外となるトロイ市のレンセラー工科大学にある研究からだ。
冷凍庫から鳴り響くアラームがなかなか止まらないことに苛立った用務員は、なんとブレーカーを落として電源をオフに。それによって、超低温の冷凍機能はストップした。
■20年続いた研究が一夜で水の泡
冷凍庫には、警報音が鳴った際は長押ししてミュートにするといった指示書が貼られていた。しかし用務員は「ピーピーと鳴って止まらないため、イライラしてしまった」などと説明している。
その軽率な行為により、同大学が1億4,400万円もの研究費をかけ、20年にわたり続けてきたある細胞についての研究事業が、一夜にして水の泡と化してしまった。
■摂氏マイナス80℃で保存
同大学によれば、細胞培養やサンプルなどは摂氏マイナス80℃で保存されていたといい、たった3℃の変化で壊滅的なダメージを受けるとのこと。
翌日、出勤した研究室のスタッフが冷凍庫がマイナス32℃まで上昇していることに気づき、最悪の事態は発覚した。なお、冷凍庫はマイナス78℃以上、あるいはマイナス82℃以下で警報音が鳴るシステムだという。
■研究者らの落胆と喪失感は甚大
このほど同大学はレンセラー郡高等裁判所において、その用務員を派遣していた清掃会社のダイグル・クリーニング・システムズ社に、賠償責任を求める訴えを起こした。
用務員は2020年から同社で働き、研究室には数ヶ月前に派遣された。大学はダイグル社について「研究室に出入りする者の心得を、しっかりと教育しないまま派遣した」と強く非難している。また人的ミスではあるものの、用務員個人の責任は問わないそうだ。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)