まだまだ高価なテスラのEV しかし購入後「ものすごく経済的」なことを実感した話
【鈴木貴博『得する経済学』】まだ2年しか乗っていない車を「経済分析のため」電気自動車に買い替えた経済評論家の鈴木貴博さん。買い替えてみて気づいた「EVの安さ」について存分に語っていただきます。
「うわぁ、滅茶苦茶燃費がいいなあ」
これは最近、ガソリン車からEV(電気自動車)に乗り換えたわが家の正直な感想です。今回はそんなEV体験談を経済学視点でまとめていきます。
■職業柄「仕方なく」EVを購入することに
経済評論家としての日々の生活の中で一番わたしが無駄だと思うのが、新しい製品に頻繁に手を出さなければいけないこと。新しい製品が出たら買って使ってみたり、話題の施設がオープンしたらわざわざ出かけてみたり。評論家は結構お金がかかるのです。
とはいえあまりに高額なのでずっと試乗だけで後回しにしていたのがEV、つまり電気自動車でした。
日本は世界の中では「EV不毛の地」と呼ばれていて、新車販売に占めるEVの比率はまだ2%程度。ヨーロッパや中国が20%に達しているのと比べればまだまだEVは珍しいので、有名な経済評論家でも別にEVを持っていなくても今まではバレなかったのです。
ただ、「さすがにそろそろみんな乗り出す頃だよな」と思い、国産中級車から乗り換えて、テスラのモデルYという売れ筋のEVに買い替えたのです。
■補助金含めたら以前の車よりも安かった!
さてEVってとても高いのですが、補助金も結構大きいんです。
わたしのケースで販売店に試算していただいたのですが、新車を買うと国から65万円、東京都から45万円の補助が出るそうです。「出るそうです」というのは購入した後で申請して、それで審査期間もあるので、わたしの懐に入ってくるのは3か月後ぐらいなのですが、まあ裏切られることはないでしょう。
それだけではなく自動車税などこれから払うはずの税金もEVは環境に良いという理由で払う必要がなくなります。テスラを東京都民が買う場合、補助金の税金の免除額を全部合計すると6年間で165万円も後から得することになります。
そうだとすればテスラのモデルYの価格約600万円は実質的には435万円、これは私がこれまで乗っていた国産中級車よりもややお安いことになります。もちろん「6年間乗った場合には」ですが。
■お楽しみはここから…実は燃費もめちゃ安い
さて今日の本題はここからで、実際にEVが手に入ってみて一番驚くのは燃費の安さです。
営業の方からは「直近(3月頃)の電気代からガソリン代に換算するとリッター30kmぐらいという感覚です」と教えていただきました。ガソリン代も電気代も値上げされているさ中ですが、基本構造としてはEVの方が燃費がいいのです。
以前乗っていたガソリン車がリッター10km前後(都内の混雑した道だと6kmぐらい)でしたからこれは滅茶苦茶安いです。特にこの一年、ガソリン代の値上がりにひぃひぃ言ってましたから、この安さはとても助かります。
■日本の「ガソリン」に問題が。まさに税金の塊
さて、EVの燃費がガソリン車と違ってここまで安いのには経済政策が関係してきます。実はガソリンの小売価格には高額の税金がとられているのです。消費税に加えて石油税、ガソリン税が上乗せになるのですが、たとえばガソリン代165円だとしたらそのうち税金は合計で72円ほど。約4割が税金です。
とはいえ昨年はあまりにガソリン代が上がりすぎたので、国から石油元売り会社に補助金を出してどうにか値段を抑えているのですが、それでもガソリン本体価格はこの例で計算しても93円と実は100円を割っているんですね。
そしてわたしは自宅のコンセントから引いた100Vの家庭用の電気でEVを充電しているのですが、電気の税金は消費税10%だけ。もちろん税金を除いてもテスラはガソリン車より燃費がいいようですが、それに日本の税金効果が加わって一気に燃費は6割も安くなったのです。
…税金って大きいですよね。
■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「EV」の話をお届けしました。本体価格とは違って実はEVの燃費は激安なのですが、その理由は実は日本の制度にあったのでした…。
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(文/鈴木貴博)