性暴行犯を絞殺した女性への有罪判決に活動家らが猛抗議 起訴は白紙撤回に
性暴行事件を扱った法廷で裁判長が「頭を殴るなどすれば撃退できただろう」と述べ、これが女性の権利向上のために闘う国内外の活動団体の怒りを買った。
深夜の自宅で性的暴行の被害にあった若い女性が、加害者である男を許せず、絞殺して遺体を切断。一旦は殺人罪で起訴され、有罪判決が下ったが…。
メキシコで起きたある事件とその後の興味深い展開について、『CBS News』『KDH NEWS』などが報じている。
■送りオオカミと化した男
2021年5月の夜、メヒコ州のチマルワカン市に暮らすロクサナ・ルイスさん(23)は、自宅のベッドで性暴行の被害にあった。
その夜、友人と出かけた先で知り合った男が「送りオオカミ」と化したという。シングルマザーとして4歳の息子を育てているルイスさんは、「暴れれば殺す」と言われ求めに応じたが、男を見逃すつもりはなかった。
■懲役6年の実刑判決が下る
ルイスさんはTシャツを手に取るとチャンスを待ち、まずは顔を殴ってからそれを男の首に回して絞殺。遺体を切断してバッグに詰め、引きずっているところを通報され、逮捕となった。
警察は正当防衛の訴えを認めず、昨年4月にルイスさんを殺人、死体損壊などの容疑で起訴。市の裁判所は今月22日、懲役6年2ヶ月の実刑判決とともに、男の遺族に約220万円の賠償金を支払うようルイスさんに命じた。
■裁判長が無神経な発言
「幼い息子のためにも一審の判決に屈するつもりはない」というルイスさんは、支援団体の協力を得て控訴の準備に入った。
法廷で「頭を殴るなどすれば撃退できただろう。殺すまでもなかった」と述べた裁判長に対しては、女性の権利向上のために闘う国内外の活動団体が、「性犯罪に巻き込まれる恐怖を理解していない」と猛烈に抗議した。
■起訴そのものを白紙撤回
さらに活動家や市民は「なぜレイプ犯ではなく、その被害者を犯罪者扱いするのか」と、警察署や裁判所の前で怒りのデモを展開。話題は国内に広がり、困惑した当局は起訴そのものを取り下げると決定し、一審も白紙撤回となった。
メキシコでは性暴力事件が頻繁に起きており、政府は「女性の半数近くが、人生のどこかの時点で性暴力の被害に遭う」というデータを発表している。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)