なかなか捜査に協力してくれないヤスにやきもき… プレイヤーの応用力が試されるAI搭載版『ポートピア連続殺人事件』プレイレビュー
プレイヤーの応用力が試される? 全然頼もしくないAI搭載のヤスと行くポートピア連続殺人事件。
スクウェア・エニックスは4月24日、堀井雄二がデザインした『ポートピア連続殺人事件』を題材に、AIによる自然言語処理(NLP)などを搭載した技術デモ「SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE」をSteamにて配信。オリジナル版ポートピア世代の記者が早速プレイしてみた。
なお、本記事は事件の犯人についての重大なネタバレを含むため、未プレイの方は注意してもらいたい。
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■「あのフレーズ」の方が有名?
『ポートピア連続殺人事件』は、ドラゴンクエストシリーズの生みの親である堀井雄二氏が手掛けた本格推理アドベンチャーゲームだ。
1983年にパソコン版が、そして2年後にはファミコン版が発売され、ファミコンでは初のアドベンチャーゲームとして話題をさらった。
しかし、それ以上に本作を語る上で外せないのが「犯人はヤス」というフレーズで、このゲームを知らない人でも聞いたことがあるのではないだろうか。
これはゲーム史上最も有名なネタバレとも言われており、このフレーズは作品を飛び越え、今でも時折ネットミームとして語り草になっているほどだ。
■AIがテキストを「理解」する
本作は、刑事である主人公が部下で相棒のヤスと対話をしながら殺人事件の捜査をするというオリジナル版「ポートピア」のシステムを踏襲している。
大きく違うのは現代ならではのAI技術を搭載しており、プレイヤーが行動をする際に入力するテキストには自然言語処理(NLP)や自然言語理解(NLU)が使用されている。
ゲーム内では、プレイヤーは次の行動を選択肢の中から選ぶのではなく、プレイヤー自身が入力したテキストによって行動が選択される。
テキストの書き方は、「アリバイについて訊く」などとゲームの選択肢風でもいいし、「捜査本部へ行こう」と、ヤスと話している雰囲気を重視してもいい。完全にプレイヤーの自由である。
ただ、自然言語生成(NLG)による雑談会話機能は、AIが非倫理的な発言を行ってしまう可能性から、現バージョンでは省かれているとのことだ。
■自分だけの選択肢が選べる
記者は「ポートピア」を既プレイだったこともあり、本作は80分ほどでクリアすることができた。アイテムの細かい違いはあるが、フラグの管理はおおよそファミコン版と同じようだ。
まず本作の良い点を挙げると、自然言語処理によるコミュニケーションは、思っていた以上に没入感を与えてくれる。
「話を訊け」「調べろ」と命令口調で厳しいボス役を演じてみてもいいし、語尾に「~ぞい」「~でやんす」などと付け加えても、多少であれば通るようだ。
これから遊ぶ人はぜひ、自分なりのスタイルで捜査をエンジョイしてみてほしい。
なお、最初から犯人が誰かわかった上でヤスに対してグイグイ行くことも可能だが、きちんとフラグを立てないと効果はないようだ。
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■ヤス、しっかりしてくれ…
一方で、ゲームを通して気になってしまったのは、相棒であるヤスを始めとするNPCのポンコツぶりだろう。
凶器や死因など重要な手がかりについて尋ねても「え?」「うーん…」とフワフワした返事を連発し、容疑者への聞き取り調査でも「いま訊くことですか?」と横槍を入れてくる。
これはそもそもAIの自然言語理解が十分でないことに加え、正解と判定されるワードが限定的すぎることが原因だろう。
話の流れが分かっていても、次にテキストをどう入力すればいいかで悩んだプレイヤーは多いのではないだろうか。
ちなみに、Pauseキーを押すことでその場面で使用されたテキストの統計情報が見られるため、完全には詰みにくいように設計されている。
時には脱線して、事件の本筋とは関係ないような行動を選ぶと、思わぬリアクションが得られることもあるようだ。
■将来性に期待
本作はAI技術を搭載したADVとして意欲的な作品ではあるが、前述のAIによる言語理解が未熟な点もあり、記事執筆時点ではSteamのユーザーレビューが「非常に不評」となっている。
慣れてくるとプレイ中に使用する単語がほとんど限定されたものになってくるため、「40年前のテキストアドベンチャーゲームと同じ」というレビューも寄せられていた。
しかし、本作はあくまでも無料で公開された技術デモであり、この先を見据えた実験的な作品であることを考えると評価できる部分も大いにある。
特に、ここ1、2年での画像生成AIのめざましい変化の速さを考えると、今はまだポンコツなヤスがあっという間にトーク力おばけに進化してもおかしくはなさそうだ。
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(文/Sirabee 編集部・びやじま)