水族館で53年間飼育されショーを引退したシャチ 海に戻す計画は問題勃発で難航か
訪れる人々を魅了する動物園や水族館の生き物たち。野生に比べてエサに困ることはないが、狭い環境で人生を終えることは幸せなのだろうか。
たくさんの生き物たちのかわいい表情が間近で見られる動物園や水族館は、老若男女問わず訪れた人々を魅了する。しかし生き物たちにとっては、本来暮らすべき野生の地とは比べ物にならないほど狭く、人間の支配下で生活しているのも事実だ。
そんななか、アメリカの水族館で今、長年飼育されてきたシャチの余生について大きな問題が起きているという。イギリスの『Daily Mail』やカナダの『Global NEWS』も報じた。
■昨年ショーを引退
アメリカ・フロリダ州にある『マイアミ・シークアリウム』では、イルカと一緒に泳ぎ、アザラシやペンギンと触れ合うことができるなど、世界でも珍しいイベントが開催されている。
なかでも長く人気を誇ってきたのが、シャチによるダイナミックなショーだ。
しかし1970年にワシントン沖で捕獲され、同水族館で53年間も飼育されてきた56歳のシャチ「ロリータ」は、昨年病気によりショーを引退。その余生をめぐり問題が勃発している。
■生き様に同情
ロリータの生き様に同情していたNFLチーム『インディアナポリス・コルツ』のオーナーのジム・イルセーさんは、数日前に「野生の海に返すべきだ」と発言。非営利団体『オルカ・ネットワーク』のホワード・ガーネットさんもそれを支持した。
ふたりによると、まず野生に慣らすために海の中に広い囲いを作ってロリータを放ち、野生のシャチが発する声を聞こえるようにする。それにロリータが反応し、コミュニケーションが取れるようになるのではと考えているそうだ。
■費用は約11億円にも
それに対し、「水族館のお金儲けのために長年利用されてきたシャチを、わずか6メートルほどの水槽に入れておくなんて、刑務所の独房に入るようなものだ」と非難の声が相次いでいる。
またロリータの輸送や囲いの製作費用などを含めると、費用の総額はざっと850万ドル(約11億円)にのぼると考えられている。
■高齢のシャチはストレスに耐えられる?
そこで哺乳類の専門家アンドリュー・トライトさんが、野生のシャチの寿命は80歳ほどだが、水族館で生活する個体は45歳とかなり短いことを説明。
56歳のロリータはかなりの高齢と考えるべきで、輸送時のストレス、海での野生の環境に順応できるものか、「負担は大きいだろう」と指摘している。
過去の事例では、映画『フリー・ウィリー』に出演したシャチの「ケイコ」が海に戻されたものの、他のシャチと馴染めないストレスから約1年後に死亡したという。同水族館は今後の計画について、いまだ明かしていない。
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(文/Sirabee 編集部・桜田 ルイ)