Z世代にコロナ世代、ロックダウン世代… 若者を表すワード「○○世代」と認識のズレ
【常見陽平『過去から目線』】何かと取り沙汰される「Z世代」。この「○○世代」「○○型」という呼び方、じっくり考察してみると「実態とのズレ」があることに気づく。
どこに行っても「Z世代」だ。あらゆる分野で「Z世代の活躍」「Z世代に向けた商品」というフレーズを見かける。WBCが閉幕したが、佐々木朗希投手のようなスポーツ選手を始めアーティスト、社会起業家などでZ世代の旗手たちがメディアでよく取り上げられる。
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■「理想実現を目指す」世代
Z世代の定義は今も明確ではないが、X世代、Y世代に続く1990年代なかばから2010年代前半までに生まれた若者たちを指す言葉とされている。
特徴として「自分らしさへのこだわり」「SNS前提」「効率化」「コスパ」「オープン」「フラット」「環境コンシャス」などが挙げられている。
芸能人・スポーツ選手においては圧倒的な活躍と、適切な努力、文武両道感が特徴としてあげられる。社会起業家は、環境問題、LGBTQなど、環境や人権など自分たちにとって切実な社会問題を解決しようと模索している。起業家も社会の不・負を解消し、自分たちの理想を実現することを目指している人が取り上げられる。必ずしも上場・売却を目指さない人もいる。「稼ぐが勝ち」という世界観とはまったく異なる。
■「活躍している若者」を前提にする認識
もっとも、このような世代のイメージは象徴的な人物や、ムーブメントと重ねられて語られがちだ。よくメディアで取り上げられる若者は、御用若者、プロ若者に見えてしまうこともある。活躍している若者前提で世代を語られると解釈を誤ってしまう。
就活の選考では「似非Z世代学生」が出没するという声がある。SNSを使って発信し、SDGsに関心が高い風を装うのだが、その手の事情に詳しい採用担当者からはあっという間に見破られてしまうタイプの学生である。ただ、大人たちの期待が型にはめてしまっているのかもしれない。
この「Z世代」という言い方に「またか」と思った人もいることだろう。そう、どの時代においても「○○世代」「○○型」という呼び方は生まれるのだ。
■世代ではなく「時代の影響」も
世代とは、だいたい同じ時代に生まれた人々の総称だ。団塊世代、しらけ世代、団塊ジュニア世代、バブル世代、ポストバブル世代、就職氷河期世代、ロスジェネ世代、ミレニアル世代、ゆとり教育世代、さとり世代、ポストミレニアル世代、そして、Z世代と、様々な「世代」が語られてきた。
松井秀喜世代、松坂大輔世代など、特定の著名人をとりあげたものも存在する。私は、団塊ジュニア世代であり、就職氷河期世代、ロスジェネ世代であり、松井秀喜世代だ。新型コロナウイルスショックが直撃した頃にはコロナ世代、ロックダウン世代という言葉も登場した。
もっとも、本当に世代の違いなのかという点は検証が必要だ。世代ではなく、年齢や時代の影響ということも考えられる。このあたりの切り分けは慎重に行わなくてはならない。