復活する女優・ベッキー 秋元康作品のタレント再生的起用の秘密
映画『初恋』や『赤いナースコール』で評価されたベッキー。秋元康作品の理念あるキャスティング。
ベッキーがドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系)のシークレットキャストの1人であることが判明し、話題となった。ベッキーの復活劇に大きく貢献した「秋元康氏のドラマキャスティングの企画性」に焦点を合わせ、考察したい。
■復活のベッキー
『大病院占拠』は、キャストが明かされていない鬼のお面をかぶった武装集団が大病院を占拠するサスペンスドラマ。鬼側に誰がキャスティングされているのかが話題。
中でも、「黒鬼」のベッキーは驚きの正体であった。不倫騒動以来、多くの仕事を失ってしまったベッキー。
しかし、ベッキーは女優業で実績を積み上げることにより、土曜日の22時というメジャーなプライムタイムのドラマに登場するまでに至ったのだ。見事な復活劇と言えるだろう。
■女優・ベッキー
ベッキーの女優業が最初に大きく評価されたのが、三池崇史監督による映画『初恋』だった。愛する人を殺され復讐の鬼と化す、ジュリ役の狂気の演技が高く評価されている。
もう1つの重要なベッキー出演ドラマが、秋元康氏・企画・原作の『赤いナースコール』(テレビ東京系)だ。こちらもまた秋元氏が得意の連続殺人系ミステリー。
クセの強い役柄で、ベッキーは女優業としての地位を確立する。俳優業の方が確実な評価を得やすいのか、好感度を上げやすいのか、ベッキーは着実に新たなファンを獲得しているようだ。
■秋元康氏のキャスティング術
注目の深夜地上波ドラマへのベッキーの起用が、秋元康作品であるのも半ば必然的と言えるだろう。秋元氏のドラマのキャスティングも、またメッセージ性のある特徴を帯びている。
一言でまとめてしまえば、「ここから売れてほしい」という理念性やメッセージ性のあるキャスティングとなっているのだ。『ユーチューバーに娘はやらん!』(テレビ東京系)で主演した佐々木希が典型例。
■渋い俳優が売れる秋元作品
秋元氏のキャスティング術は、役者業界に対してもメッセージ性を帯びるものとなっているだろう。『あなたの番です』(日本テレビ系)からは田中圭や奈緒ら。
『真犯人フラグ』(日本テレビ系)からは桜井ユキ、香里奈、猫おばさんこと平田敦子、「2択刑事」こと渋川清彦ら。秋元氏は、これらの渋い俳優達を抜擢し、売れさせている。
香里奈もまたベッキーと非常に重なる起用のされ方であり、現在もまた、『100万回 言えばよかった』(TBS系)で、カギを握る重要な役で出演中。
■秋元作品とジャニーズ
また秋元氏は、ドラマプロデュースで、アイドルの世界にも大きな影響を与えている。最も印象的なのは、もはや秋元ドラマ枠となっている月曜日23時台のテレビ東京枠での、ジャニーズ・アイドルの起用だ。
『赤いナースコール』主演の佐藤勝利、『吉祥寺ルーザーズ』主演の増田貴久、現在放送中『ダ・カーポしませんか?』の伊野尾慧と、ジャニーズ・アイドルの起用でも、「もっともっと売れよう」と言わんばかりのメッセージ性。
■ベッキーの才能を活かす秋元康氏
ほとんど下積みなしで活躍し、まもなく番組MCとして君臨したベッキー。また「Don’t touch me」の持ちギャグもあり、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)では、「木部さん」というシュールコントキャラすらもアドリブでこなすことができていた。
後にも先にもない天才女性タレント・ベッキーだったが、スキャンダルが発生すると、その実力は差別的なほどに、評価してもらえないものだったようだ。
また1つ才能を開花させたベッキー。今度こそベッキーの実力が、評価され続けてほしいもの。秋元康氏のキャスティングは、実力者にチャンスを与える理念溢れるものなのである。
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(文/メディア評論家・宮室 信洋)