「日本企業の中国進出」がリスクとなる恐れも 問われる経営者のモラル
経済安全保障や地政学の観点から懸念が高まるチャイナリスク。脱中国を図る企業がある一方、中国ビジネスを拡大する企業も…。
家具・インテリア製造小売り最大手のニトリホールディングスは今月、北京に初となる2店舗を同時に開店し、来年末までに現状の59店舗から100店舗にまで拡張する計画を明らかにした。
また、村田製作所も江蘇省にある工場で445億円を投じて生産棟を新たに建設するという最大規模の設備投資を発表した。
■チャイナリスクはお構いなしの企業も
日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国市場なしにそもそもビジネスが成り立たない日本企業も多い。
よって、人件費高騰やゼロコロナ対策など課題があったとしても、中国では儲かるというただそれだけの理由で事業拡大を決断する企業も少なくないことだろう。
■脱中国を図る企業が増加
一方、チャイナリスクを懸念して脱中国を図る日本企業も増えている。
たとえば、キヤノンは先月下旬、海外の生産拠点において地政学的なリスクが高まっているとして、工場の展開など時代に見合った体制に見直すべきとして主要な工場を日本に回帰させる考えを示し、チャイナリスクをとくに懸念し、中国での事業を安全な第3国へ移転させるか日本に戻すか2つの道しかないという認識を示した。
また、日立製作所も10月、チャイナリスクを懸念し、サプライチェーンの拠点を国内や同盟国へ移すことを検討していると明らかにした。今後は中国との経済関係が深まるASEANに加え、中国との関係が薄い国々も計画に入っているという。
■日本企業が抱えるジレンマ
こういったジレンマに直面する日本企業は今後いっそう増えることだろう。習近平政権3期目や台湾有事など日中関係の行方は極めて暗い。
だからといって中国事業を手放せば企業として生きていけなくなる。こういったジレンマが拡大しないよう日中関係の安定が望まれるが、悲しいことにその可能性はゼロに近く、日本企業を取り巻く事情は今後いっそう厳しくなるだろう。
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(取材・文/セレソン 田中)