妹のがん治療費のためおもちゃの銃で銀行襲撃した女 「国の英雄」と賞賛の嵐
襲撃に使用したおもちゃのピストルは、甥から借りたそうだ。
レバノン人の女性が、おもちゃの銃を持って銀行を襲撃し、預けていた1万3,000ドル(現在のレートで約180万円)を口座から引き出した。経済崩壊したレバノンに暮らす人々の貧困状況を、『Daily Mail Online』や『The Washington Post』などの海外メディアが報じている。
■銀行襲撃の様子を投稿
活動家でインテリアデザイナーのサリ・ハフィズ(28)は、自身のFacebookでベイルートの銀行を襲撃するライブ動画を投稿した。
動画では、ハフィズが受付で銀行員に話しかけた後、おもちゃの銃を取り出すシーンが映し出されており、中にいた他の客たちが悲鳴を上げる声も聞こえてくる。彼女は共犯者に手伝ってもらいながら、約1万3,000ドルをビニール袋に入れて銀行を立ち去った。
■預金を引き出せないレバノン国民
2019年、レバノンで経済危機が急拡大するなか、銀行は数週間にわたって業務を停止した。その後、引き出し可能額を大幅に制限し、レバノン国民は口座に預けたお金を月々400ドル(約6万円)しか引き出せないことになっていた。
ハフィズはもともと、自分の銀行口座に2万ドル(約280万円)を持っていたという。すべてを引き出すには4年以上かかる計算だが、彼女には長く待てない理由があった。23歳の妹ががんを患っており、その治療費が早急に必要だったのだ。
■腎臓を売る選択肢も…
銀行を襲撃後、ハフィズが地元メディアに話したところによると、彼女は銀行に何度も預金を引き出すよう懇願してきたが、取り合ってもらえなかったという。すでに身の回りのものをたくさん売り払い、腎臓を売ることまで考えていたそうだ。
Facebookに投稿されたライブ動画では、ハフィズが「私はサリ・ハフィズ。今日来たのは…病院で死にかけている妹のために、預金を奪うためだ」と視聴者に語りかけるシーンもある。
■「命をかけてもお金を取りに」
失業者が増え続け、多くの国民が貧困にあえぐレバノンで、ハフィズの行動は賞賛を持って迎えられた。SNS上では、銀行にいるハフィズに王冠をコラージュした写真が出回り、「国の英雄だ」「自分のお金なんだから当然」と言った声が寄せられた。
当のハフィズはメディアのインタビューに対し、「多くの人々が(貧困から)自殺しようとしている」「でも、私は彼らに言いたい。銃を取って自分を打たないで。命をかけてでも、お金を取りに行きなさい」というメッセージを送っている。
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(文/Sirabee 編集部・広江おと)