『時をかける少女』に登場のアーチ、今日で撤去… 決意の裏に「3年前の苦悩」
人気アニメ『時をかける少女』。同作にまつわる「聖地」がなくなろうとしていて…。
2006年に公開されて以来、たくさんの人に愛されているアニメ映画『時をかける少女』。東京・新宿区上落合には同作のモデルとなったアーチがある。
長らくファンの間で「聖地」とされてきたが、そんなシンボルが今日なくなろうとしていて…。
画像をもっと見る
■映画にも登場するモデル
『時をかける少女』は、あるきっかけで過去に遡ってやり直せる「タイムリープ」という能力を身につけたヒロインの、淡い恋の行方と心の成長を描いた物語。映画公開から16年経つが、いまだに根強い人気を誇っている。
同作には「倉野瀬商友会」というアーチが登場するが、そのモデルは新宿区上落合にある「中井商友会アーチ」だ。同アーチは1990年に設置されたもので、アーチ中央には時計や鈴が配され、懐かしさを感じるデザインが特徴。多くのアニメファンの間で「聖地」として愛されてきた。
■すでに文字がなくなって…
だが、9月初めにネットがざわついた。このアーチが9月14日の夜間工事によって撤去されることが発覚したからだ。ファンの間では、「聖地」がなくなることを悲しむ声があがっている。
撤去数日前の9月中旬、記者が足を運んでみるとすでに「中井商友会」の文字がなくなっていた。着々と工事が進んでいるようだ。
なぜ撤去されることになったのだろうか。中井商友会の会長を務める五十嵐功さんに話を聞いたところ、驚くべき「舞台裏」が明らかになった。
■脳裏をよぎった「3年前」
五十嵐さんによると、かねてから老朽化が激しくなっていたという。「これまでもメンテナンスはしていましたが、とうとう機材本体が危なくなってしまったんです。1年ほど前に時計が動かなくなり、修理に来てもらいました。その際、業者の方からアーチ自体の耐久性を指摘されたんです」(五十嵐さん)。
ただ、長年街のシンボルだったアーチを取り壊すのには抵抗があったそうだ。泣く泣く決意を固めたのは、かつての「苦悩」が脳裏をよぎったためだったようで…。
「3年前の関東を直撃した台風で、アーチとは別の街路灯が傾いてしまい、撤去したことがありました。あの時のことを思い出して、万が一アーチが倒れたらけが人が出る可能性があると思ったんです」(前出・五十嵐さん)。
件のアーチは、高さ8メートルほどで幅は6メートルを超える。昼間はこのアーチの下をたくさんの人が行き交っている。街の人たちの安全面を考えた上での判断だったのだ。
■気になる今後は…
撤去することが決まると、住民から「壊さないでほしい」という声があがったそう。『時かけ』ファン以外からも愛されていたことがうかがえる。
気になる今後だが、街路灯の建設を検討しているという。「できることなら作り変えたいと思っていましたが、今は法律的な問題でアーチ自体作れなくなってしまったんです。他にはないような街路灯が作れたらと思っています。14日の夜間工事で撤去した後、年内に基礎工事を終わらせて、23年度に新しいものを作る申請をします。完成は25年ごろを予定しています」(前出・五十嵐さん)。
生まれ変わった街路灯が、大人から子供までたくさんの人を照らして笑顔にさせる──。そんな明るい“未来で待ってる”。
・合わせて読みたい→大谷翔平選手、本塁打、マルチヒットに盗塁の大活躍 ファンは「気分最高」
(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)