人工大理石を製造する労働者に肺疾患急増か キッチン天板でも人気の素材
過去60年間、珪肺症の患者は滅多にいなかったが、人工大理石の需要急増で事情は変わった。
ビルはもちろん、家庭のキッチンのカウンタートップ(天板)や玄関の床材などにも使用されるようになり、需要がますます増えている人工(人造)大理石。だが、オーストラリアでこのほど『7News.au』が気になるニュースを伝え、国民の間に波紋を広げている。
■人気の人工大理石だが…
近年、日本でも人気が高まっている人工大理石。だが、このほど西オーストラリア州パースにあるカーティン大学の研究チームが、その製造過程で生じるシリカ粉塵の危険性について「肺がんおよび珪肺症を発症する労働者が増える」と警告した。
粉塵の問題は砂、土、石、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、ガラスなど、多くの建築資材において発生しているが、シリカ粉塵の脅威は特別だという。
■政府の依頼で行われた調査
カーティン大学で公衆衛生学を専門とするリン・フリッチ教授、およびレネー・ケアリー教授とその研究チームが行った調査によれば、人工大理石の製造にたずさわる労働者は鉱業、採石、建設、製造などを合わせて現在50万人以上いるという。
同国の政府はSAFE WORK AUSTRARLIA(オーストラリア労働安全機構)を立ち上げていたが、塵肺問題への対策を強化するにあたり、カーティン大学に調査を依頼していた。
■恐ろしいシリカ粉塵
結晶性シリカは、二酸化ケイ素からできるクオーツとも呼ばれる鉱物・石英のこと。国際がん研究機関(略称 IARC)は、それを「グループ1:人に対する発がん性が認められる物質」に分類している。
さらに、珪肺症はそのシリカ粉塵を吸い込んできた人の肺が瘢痕化してしまう病気だが、研究チームは人工大理石の製造に携わる労働者のうち、この先1万人以上が肺がんを、また最大で10万3,000人が珪肺症を発症する可能性があるとみているという。
■健康を守るためにできること
今回の調査の結果について、研究チームは「シリカ粉塵の問題を解消するため、人工大理石を完全に禁止することが望ましい」「それが難しいのであれば、粉塵の発生を抑えるため湿式切断機の導入を徹底し、作業員は高品質の防じんマスクを使用するべきだ」とまとめている。
過去60年間、珪肺症と診断される患者は滅多にいなかったが、人工大理石の需要急増で事情は変わったと考えるべきだという。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)