日本に1つだけの牛丼店「丼太郎」がついに… 記者が見た”非情な現実”
ドラマのような歴史のある「丼太郎」。お店に足を運ぶと「異変」が…。
突然だが、かつて東京23区内で営業していた牛丼チェーン店「丼太郎」をご存知だろうか。紆余曲折あって現在は日本で1つだけになってしまったお店だ。
原材料価格高騰によって飲食業界には逆風が吹き荒れているが、いま同店はどうなっているのだろうか。6月中旬、お店に足を運んだところ、「非情な現実」を目の当たりにして…。
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■ドラマのような歴史
牛丼店と聞くと、松屋、吉野家、すき家を思い浮かべる人が多いだろう。かつて、そんな大手チェーン店に肩を並べる「牛丼太郎」というチェーン店が存在していた。
同店は1983年の創業以来、1杯200円という破格の安さで牛丼を提供していた。東京都内に約10店舗を展開していたが、大手チェーン店との低価格競争の末、12年に経営母体の会社が倒産してしまう。
お店もすべて閉店かと思われたが、元従業員が新しく会社を設立。東京の代々木店と茗荷谷店の2店舗の経営権を新しい会社に譲渡し、店名を「丼太郎」に変えて再スタートを切った。
残念ながら代々木店は15年に閉店してしまったが、茗荷谷店は生き残っていた。
■「丼太郎」に足を運ぶと…
とはいえ、ここ数年コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻による原材料価格高騰など、飲食業界は苦しい状況に置かれている。日本で1店になった「丼太郎」はいまどうなっているのだろうか。
6月中旬、茗荷谷駅から歩いて徒歩数分のところにあるお店に足を運んだ。近場には松屋やなか卵が並んでいるが、お目当てのお店はというと…。
あった! 看板にいる舌を出したお茶目な金太郎と歴史を感じるお店の佇まいが独特だ。
「牛」の文字が分かりやすく消されているのも愛着が湧いてしまう。
■お店に入ると…
外のメニュー表を見て気付いた。牛丼並の値段が上がっているのだ。
20年に訪れた際は290円だったが、現在は330円になっている。時代に逆らうかのように200円台を維持していたが、昨今の厳しい状況で値上げを余儀なくされたのだろう。
再スタートを遂げたお店がここまで追い込まれたところに「非情な現実」を感じた。気を取り直してお店の中へ入る。
スタッフ1人で回す店内は満席だった。作業服を着た中高年の男性が多かったが、若い女性客の姿も見受けられた。
■懐かしの味
「丼太郎」には納豆丼(並250円)という気になるメニューもあるが、今回は牛丼大盛りを注文。お値段は味噌汁付きで45o円だ。
味は「この世のものとは思えないウマさ」「ほっぺたが落ちそう」などと表現するものではない。まさに「こういうのでいいんだよ」を体現したような味だ。
濃いめに味付けされた牛肉、柔らかく甘めな玉ねぎ、そして卓上の真っ赤な紅生姜…。これ以上何もいらないくらい完成された一杯だ。
「丼太郎」にも値上げの波は訪れていた。それでも昔懐かしの一杯を提供し続けるお店が生き残ることを願うばかりだ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)