妊娠後期の頭痛で脳に血管の奇形が発覚 医師団が的確な治療で母子の命を守り抜く
女性は妊娠34週のときに激しい頭痛を経験。なかなか治らず、不安で病院を受診した。
ある女性がこのたびメディアの取材に応じ、「本当に大変でしたが、今こうして生きていられることは奇跡だと思っています」と話し、かわいい赤ちゃんを抱きしめる写真を公開した。
今年1月、激しい頭痛に見舞われたことがきっかけで、ずっと順調だった妊娠が大きく様変わりしたことを、『Metro』『Inside Headline』などが報じている。
■妊娠後期に激しい頭痛
イギリス・ノーフォーク州のノリッジに暮らすサラ・ピルグリムさんは、おなかの3人目の子供が妊娠34週だった今年1月、夜中に激しい頭痛で目が覚めた。痛みが治らないことから不安になり、病院を受診したという。
出産が近づくにつれ血圧は上がるものだが、時に命にかかわるほど高くなる人もおり、腎臓の機能、出産時の出血量にもかかわってくる。さらに産後は育児の疲労も加わるため、妊娠合併症や頭痛は軽視できないのだ。
■脳動静脈の奇形に動脈のコブも
ケンブリッジ大学医学部アデンブルック病院で精密検査を受けたサラさんは、脳内に異常な血管のもつれがあることが発見され、「脳動静脈奇形 (Arteriovenous Malformation:以下AVM)」と診断された。
AVMは異常な動脈と静脈が毛細血管を介さずにつながり、とぐろ状の塊と化す血管の奇形。医師は「治療法としては3年かけての放射線療法、あるいは出産後の手術になる」と告げたが、その直後になんと脳動脈瘤が存在することも判明した。
■帝王切開手術の1週間後に…
脳動脈瘤が破裂すれば致命的だ。この状況でお産を迎えることは大変危険だとして、同病院では母子を救うため脳神経外科と産科でチームが組まれた。
血圧の上昇を避けるため、1月19日には帝王切開術で男の赤ちゃんが誕生。その1週間後、10時間をかけて摘出手術が行われた。元気な3人の子を育てていくためにも、医療チームは母親のサラさんを絶対に助けなければならなかった。
■「頭痛の放置は厳禁です」
そうして手術は大成功。サラさんの顔面は目の周りを中心に殴られたかのように腫れていたが、術後2日目には、元気に誕生していたシドニーくんを腕に抱くことができた。
彼女は「上の2人の子供の妊娠では何ら問題が起きませんでした。背景には血圧の変化があるようですが、3人目で初めて自分の脳内に起きている事実を知ったのです」「皆さんも決して頭痛を軽視しないで。特に脳動脈瘤は時限爆弾のようなものだそうです」と話している。
■若年者の脳卒中の原因に
未破裂の脳動脈瘤も危険だが、AVMは血管壁も薄く破れやすいことが問題で、遺伝性はほとんどなく、若年者の脳出血やくも膜下出血などの原因となる。
国立研究開発法人「国立循環器病研究センター」によれば、治療法としては開頭による摘出手術、ガンマナイフ(定位放射線療法)、血管内治療(塞栓術)があり、経過観察となることも。患者の状況に合った治療方針が、専門医により検討されるという。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)