下水を処理したリサイクル・ビール 「環境に最も優しい飲料」と世界が注目
食糧難に備えるため、今後は昆虫食が増えていくという説もある。
地球温暖化、水・食糧の不足や大気汚染など、今、人類は山積みの環境問題を抱えている。そんな中、シンガポールでは深刻な水不足に対処すべく、下水を再利用したビールが発売され、話題を呼んでいる。『Indiatimes』や『Firstpost』などアジアのメディアが報じた。
■高性能フィルターでろ過
このたび新発売となったのは、人々の排泄物や生活排水などが含まれる下水を処理した水で作られた、リサイクル・ビールの『NEWBrew』だ。
イギリスのBBCによると、これは「環境に最も優しいビール」として注目を集めている。再利用される下水は、超高性能フィルターで数回ろ過されてシンガポールの水道に汲み上げられ、厳格な水質検査により、安全に飲めることが証明されているという。
■水不足の認識を高めるため
NEWBrewは、国営水道局(PUB)と地ビール醸造所である『Brewerkz』が、長年かけ共同で開発してきた自信作だ。ビールの主成分は90%以上が水分であり、ともに「シンガポール国民に水不足の現実を認識してほしい」としている。
そして4月17日から21日にかけてマリーナ・ベイ・サンズで開催された、上下水道関連ではアジア最大規模の国際展示会「シンガポール国際水週間(Singapore International Water Week)」で、NEWBrewは世界に向けてお披露目された。
■後味は「ハチミツを焼いたよう」
このビールには5%のモルトやホップ、麦芽などが含まれ、きれいなブロンズ色をしている。さらに「ハチミツを焼いたような味」が特徴だといい、3缶セットで発売。1缶あたりのお値段は約416円だそう。
シンガポールの水道局によると、リサイクルされた処理水は現在国内の需要の40%を担っており、政府は2060年までにそれを55%に引き上げる見通しだ。
■同様の商品が増える可能性も
再生水を利用して作られたビールは、これが初めてではない。アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴでは、『ストーン・フル・サークル・ペールエール(Stone Full Circle Pale Ale)』という商品が2017年に登場した。
また、2021年10月にはシンガポールの企業『クラスト・グループ』が、食品ロスへの意識を高めたいとして、ホテルやレストランで無駄になったパンや食材から作られたビールを開発している。
将来的にますます深刻になると言われている水や食糧の不足に対処するため、世界では同様の試みが今後も続けられていく模様だ。
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(文/Sirabee 編集部・桜田 ルイ)