「マリカー集団」ストリートカートがひっそりと”閉店” 事業者を取材すると…
かつて東京の秋葉原や渋谷を走っていたストリートカート。秋葉原店を訪れると、「異変」が…。
かつて、人気ゲームキャラクターのコスチュームに身を包んだ集団が、東京の秋葉原や渋谷、浅草などの街を走り回ったストリートカート。日本に訪れた外国人を中心に一大ブームとなったが、最近彼らをめっきり見なくなった。
4月下旬、ストリートカートの事務所を訪れると、なんともぬけの殻になっていた。何があったのか…。
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■事故や訴訟で「お騒がせ」の過去
4月19日、電動キックボードが16歳以上であれば運転免許なしでも公道を走行できる改正道交法が成立した。ネット上では安全性を疑問視する声もあがっているが、かつてキックボードのように公道を走って良くも悪くも注目された乗り物があった。ストリートカートである。
2015年ごろから流行した観光客向け用アクティビティで、任天堂の人気ゲーム「マリオカート」風コスプレをして利用者に公道を走らせるサービスだ。東京の秋葉原や渋谷、品川などの店舗で衣装やカートをレンタルし、連れ立って道を走る姿はまさに同ゲームそのものだった。
しかし、日本の交通ルールを守らなかったり、カートのハンドリングが良すぎることもあり運転制御できずに接触事故などが多発。17年には「本家」任天堂が同社のキャラクターの画像や映像を許諾なしに宣伝・営業に利用していたことが不正競争行為にあたるとして提訴した。
直後、運営会社は社名をマリオカートをイメージさせるものから変えるなどしたが、20年に任天堂が勝訴し、ストリートカート側は5,000万円の賠償金支払い命令の判決が下された。
■店舗を訪れると…
ただここ数年、東京の繁華街で「マリカー集団」を見ていない。ストリートカートのホームページを見ると、まだ東京の品川に2店舗、秋葉原に2店舗、渋谷、東京ベイ、浅草、大阪、京都、沖縄の計10店舗を構えているとある。
現在、ストリートカートはどうなっているのだろうか。4月下旬、秋葉原店に足を運んだ。
秋葉原の2店舗は、どちらもシャッターが下ろされ、看板もなくなっていた。かつてはビルの1階に入っていたのだが、ビルに入っている会社の名前が載った看板にストリートカートの名前はない。
渋谷店も、同様だった。一方、浅草店はポストに「SAMURAI KART」の文字は残っているものの、シャッターが下ろされ、営業している気配はない。
■「2年前から休業状態」
秋葉原店近隣の別店舗スタッフは、原因をこう分析する。
「コロナが原因ではないでしょうか。20年から外国人が来なくなって、ストリートカートはずっとシャッターが閉まって休業状態になっていました。お店のスタッフらしき人も全然出入りしておらず、気づいたら看板もなくなっていたんですよ。もともと、利用していたのは外国人の観光客ばかりだったので、コロナはそうとう痛手だったのではないでしょうか」(秋葉原店近隣の店舗スタッフ)。
たしかに、以前は秋葉原や渋谷、浅草で観光している外国人がたくさんいたが、ここ数年ほとんど見かけない。ストリートカートは、そうした人たちをターゲットにしていただけに、経営悪化が想像できる。
■各店舗に電話をかけると…
とはいえ、ホームページは残っていて、各店舗の電話番号も記載されている。現在の状況を聞こうとすべての店舗に電話をかけたが、浅草店と京都店以外の店舗は、日本語か英語で「この電話番号は現在使われておりません」というアナウンスが流れた。
浅草店はコールは鳴るもののつながらず、京都店では日本人が出たが「ストリートカートは2年前に閉店して、いまは全く関係ない別のお店になっています」と言われた。ストリートカートは「閉店」したのか、今後再開する予定はあるのか。ホームページに記載されていたメールに問い合わせたが、期限までに回答はなかった。
ホームページがあるとはいえ、店舗は営業しておらず、電話もつながらないとなると、「閉店」したと見るのが自然な流れだろう。「任天堂裁判」で敗訴したことと、コロナによるダブルパンチが大きかったのかもしれない。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)