浮気した17歳の妻を夫が斬首 「浮気者の殺害は無罪」と名誉殺人を主張
浮気した妻の首を斬り、街を練り歩いた夫。後を絶たない名誉殺人の被害者に非難の声が集まっている。
「妻が浮気し、ひどくプライドを傷つけられた」と激怒している男の元に、父親の強い説得で連れ戻された妻。イランでこのほど、夫が妻の命をむごたらしい形で奪う事件が起きた。
『IRAN INTERNATIONAL』『Mail Online』など、海外の多くのメディアが報じている。
■生首を手に薄ら笑い
今月5日、イラン・フーゼスターン州のアフワズ市で、髪をつかんで女性の生首を左手に下げ、堂々と通りを歩く若い男の姿が目撃された。ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、男は「これは俺の妻だ。浮気したから殺してやった」と話し、その後、自ら警察署に出頭している。
その生首は男の17歳の妻モナ・ヘイダリさんのものと特定され、警察は男の供述に従い、遺体の首から下をバーマンシャー川近くから回収した。
■妻はある男性と不倫関係に
13歳の誕生日を迎えれば女の子は結婚できるというイラン。しかしモナさんは、親族が勧めるまま弱冠12歳のときに、いとこであるその男と結婚していた。
夫婦の間に生まれた子供は3歳になったが、モナさんは最近になってある男性と知り合い、不倫関係に。家庭を捨てて一緒にトルコに逃亡していた。
■名誉殺人を主張する夫
そのことを知った男は、モナさんの父親を連れてトルコへ。力づくの夫に父親の強い説得が重なり、彼女はイランの自宅に強引に連れ戻された。その後、男は実兄に協力を求め、モナさんをマチェーテと呼ばれる鋭い草刈り鎌で殺害。逮捕時には、血だらけのそれを右手に握りしめていた。
男の兄も逮捕されたが、いずれも「これは名誉殺人。不貞をはたらいて夫や一族に恥をかかせたモナが悪い」と主張しているという。
■遺族はただ泣き寝入り
イランの人権活動団体は、アフワズ市では過去2年で約60人の女性が「名誉殺人」の犠牲になったと発表。しかし「遺族はただ泣き寝入り」するしかないとしている。
犠牲者には10~15歳の少女も含まれ、幸せな結婚生活であったとは考えにくいなかで事件が起きたとしても、憲法第630条は「浮気した妻を殺害した夫は無罪」と定めている。提訴したところで勝ち目はないという。
■国内でも大きな反響
国営メディアがこの事件について報じると、イラン国内でも大きな反響が。SNSでは「モナさんに幸せな時期などあっただろうか」「名誉殺人など関係ない。単に残虐なだけだ」「加害者の名前が公表されないのは不公平」といった批判の声で沸いている。
女の子が12歳にして結婚させられることの非情さ、イスラム法が処刑方法として認めていた斬首という行為の残虐性、そして、その殺人を誇りや名誉などと表現することの愚かさ。
それらについて、「真剣に考える時期にきている。この国では、いまだ女性に対する暴力を裁く法整備ができていない」と主張する革新派のメディアもあるようだ。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)