昆虫からペットまで「記憶を生かし美しさを取り戻す」 女性の剥製師に世界が注目
亡くなったペットの飼い主の気持ちに寄り添うプロの剥製師に、世界から注目が集まっている。
博物館や動物園ほか、学校でも見かける野生動物や昆虫の剥製。長く勤めていた研究員の仕事を辞め、プロの剥製師になったシンガポールの女性が今、世界的な注目を集めているという。『AsiaOne』や『CNA Lifestyle』が報じた。
■ペットも剥製に
シンガポールに住む28歳のヴィヴィアン・タムさん。彼女はシンガポールでも数少ない剥製師の1人だ。
ヴィヴィアンさんのスタジオには、今にも羽ばたき出しそうな鳥類、鮮やかなブルーが目を引く蝶のディディウスモルフォほか、たくさんの剥製が並び、動物の頭蓋骨や骨も陳列されている。剥製の使命は「記憶を生かし、美しさを取り戻すことにある」と彼女は言う。
■思い出をいつまでも
彼女が注目を集めている理由は、昆虫や野生動物だけでなく、家庭でペットとして飼われていた鳥類や犬、猫の剥製をも引き受けていることにある。
ヴィヴィアンさんの元には、愛するペットといつまでも一緒にいたいと願う飼い主たちの依頼もたくさん飛び込んでくる。完成した剥製は、ブーケや思い出の品物とともに飾られることになるそうだ。
■予約は半年待ち
ヴィヴィアンさんがこの仕事に興味を持つようになったのは、学生時代に学んだ動物学と美術館でのインターンシップがきっかけだった。剥製師になるには、解剖学の知識や美術的センス、そして縫合のスキルを学ぶことも必要だったという。
そしてヴィヴィアンさんは昨年、勤めていた研究員の仕事を辞め、自身のスタジオを設立。経験を積み大勢の顧客を抱えるようになった今、予約が取れるのは4~6ヶ月先になるという。
■独自のルールを設定
「例えばハムスターのような小動物でも、皮を丁寧に剥がすだけで5時間を要し、化学処理や乾燥のプロセスを含め、完成までに2週間ほどかかります」とヴィヴィアンさん。
スタジオに枕と布団を持ち込み徹夜することも多いが、完成品を手渡したときの飼い主の感激した表情や涙には毎度心を動かされ、それがすべての原動力となっているそうだ。
彼女はいくつかの独自のルールを設け、それに従っている。「まず、動物たちを自らの手で殺すことはしません。また、絶滅危惧種や保護種の剥製は手掛けません」と明かしている。
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(文/Sirabee 編集部・桜田 ルイ)