『破壊神マグちゃん』最終回 日常系漫画が『少年ジャンプ』で連載維持できた理由
映画『クレヨンしんちゃん』級のポテンシャルも見られた『破壊神マグちゃん』を振り返る。
■受験に対するマグちゃんの答
第59・60話、尾瀬唯歌(おぜゆいか)と小深山桔梗(こみやまききょう)の「親友」回は、この作品の深さを表す。
友達の存在により楽しく学校に通っていた問題児の唯歌は、成績優秀なオカルト娘である桔梗が進学校の推薦入試を勧められるところを目撃し、高校では離れ離れになると悟る。
これに対し、マグちゃんは上位存在らしく世界を俯瞰する知性から、知性とは何かを桔梗に指し示す。2人にもそれぞれ無位の邪神がついており、それぞれに解決への協力をする。
■設定の素晴らしさ
このように『マグちゃん』は、中学生らそれぞれに邪神がつくことで、ときに邪神たちは子供のように振る舞い、ときに上位存在として、使徒である中学生らを救う。互いの成長物語でもある。
またそれにとどまらず、さまざまなキャラクターが登場し、非常に複雑で見事な構成を『マグちゃん』は毎回のように展開してきたのだ。
『クレヨンしんちゃん』の映画のような、深い家族物語を構成するにもうってつけの作品。ときに邪神たちが俗世を学ぶ回は、『ジャンプ』の金字塔『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を思わせるときもあった。
■『マグちゃん』のポテンシャル
現在の『ジャンプ』は、アンケート人気を反映する掲載順が、看板漫画を除いてどう変動するかも分からないくらいに、粒ぞろいの中堅漫画が揃っている。
『マグちゃん』が長期連載漫画とならなかったのは、この状況で日常系漫画を『ジャンプ』で連載するというタイミングの問題もあっただろう。
本日で最終回を迎える『マグちゃん』だが、そのポテンシャルの高さからして、『マグちゃん』公式Twitterも望むように、アニメ化などを果たし、さらなる飛躍の可能性にかけてもらいたいものだ。
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(文/メディア評論家・宮室 信洋)