喫煙者が飲むと肺がん発症リスク上昇 危険なサプリメントを米臨床腫瘍学会が指摘
イギリス保健省も「体に良いものと信じられてきた栄養補助食品も、度を越せば有害」と明記している。
健康長寿のためとして、ありとあらゆるサプリメントが存在する現代。良かれと思って長年飲んできたものに健康被害の報告が相次いで、あわててやめたという悔しい経験をした人もいるだろう。また新たに、アメリカで心配な調査報告があったようだ。
■人気サプリメントが…
最新のがん情報や治療方法など、腫瘍学においては常に世界をリードしてきた米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:略称ASCO)。
そこが発行する『ASCO Educational Book』に、このほどサプリメント愛好家を不安にさせる論文が発表され、波紋を広げている。近年特に人気が上昇していたあるサプリメントが、がん発症のリスクをむしろアップさせている可能性が見えてきたというのだ。
■皮膚や粘膜の健康を維持
問題のサプリメントは、世界の何百万人もの人が毎日摂取しているといわれている「ベータカロチン(βカロチン・βカロテンとも)」。体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を維持し、細胞の増殖や分化に効果を発揮すると示されてきた。
また、抗酸化作用および免疫賦活(体の免疫を活発にすること)作用などもあると報告され、「老化による認知機能の衰えを遅らせる可能性も」と論じられると、その人気はさらに高まった。
■肺がん発症者が18%増
そのベータカロチンの大量の摂取が、「肺がん発症のリスクを高める」という警告が今、サプリメント愛好家の多いアメリカで波紋を広げている。
このたびの研究で、最も顕著なデータが得られたのは喫煙者だった。男性喫煙者2万9,000人を対象とした調査で、1日あたりベータカロチン20 ミリグラムを5〜8年にわたり摂取してきたグループは、摂取していないグループに比べ、肺がん発症者が18%も多いことがわかったという。
ベータカロチンは単体のサプリとしてばかりか、マルチビタミン&ミネラルに含まれることも多く、含有量には注意が必要だ。
■摂取の基本は「食事から」
また論文では、喫煙者と同様にアスベストに大量にさらされた経験がある人においても、ベータカロチンの大量摂取で肺がん発症リスクが上がることに言及。胃がん発症リスクも上昇する可能性があると指摘している。
イギリス保健省(Department of Health and Social Care)も、「体に良いものと信じられてきた栄養補助食品も、度を越せば有害。医師の指示がない限り、ベータカロチンのサプリを1日7ミリグラム以上は服用しないように」と警告。
必要な量は、ほうれん草やニンジン、緑黄色野菜など、毎日の食事から接種するようにと呼び掛けている。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)