母親が「葉酸サプリは不要」と指導され… 神経障害抱えて生まれた娘が産科医に勝訴
腸と膀胱の神経障害に苦しんでいるその女性は、いずれ車椅子での生活が予想されている。
開業医か勤務医であることは問わず医師ならば、特に専門とする分野の疾患に関し、最新の治療法や予防法について有益な情報を積極的に集めるなど、常にアンテナを張り巡らせておいてほしいもの。
それを怠り、あまりにも認識が遅れていると訴訟に発展することさえあるのだ。イギリスで注目されていたある裁判が結審したことを、『The Sun』『Mirror』などが報じた。
■馬術で活躍する障害者
イギリス・リンカンシャー州スケグネス出身のエヴィー・トゥームズさん(20)は、障害を抱えながらも、馬術競技の障害飛越競技(しょうがいひえつきょうぎ)においては健常者と争うこともある実力派の有名選手だ。
2018年には有名なチャリティーイベントで、強い影響力を持つ優れたユースリーダーに贈られる「Inspirational Young Person Award」を受賞。テレビ番組に出演し、ヘンリー王子夫妻と話をしたこともある。
■防げたはずの二分脊椎症
そんなエヴィーさんは生まれつき脊椎の形成不全という問題があり、さまざまな神経障害が出現する「二分脊椎症」を患っている。母親のキャロラインさんが妊娠中、体内でビタミンB群の1つである葉酸が不足し、胎児神経管閉鎖障害が起きてしまったためだ。
妊娠前から妊娠12週まで、1日あたり400マイクログラムの葉酸を摂取することでそれを未然に防げることは、イギリスでもかなり以前から知られていたという。
■「サプリは不要」と医師
キャロラインさんは、妊娠を望むようになると葉酸のサプリを接種するべきか迷い、地元の公共医療センター「ホーソン・メディカル・プラクティス(Hawthorn Medical Practice)」の産科を訪ねて相談した。
対応したフィリップ・ミッチェル医師は、「普通に良質な食事がとれていれば必要ありません」と即答。そのひと言が2001年2月に誕生したエヴィーさんの人生を狂わせたとして、成人した彼女は損害賠償金を求め、ミッチェル医師を提訴していた。
■いずれ車椅子の生活に…
エヴィーさんは法廷で、胎児神経管閉鎖障害のせいで脊椎と脊髄がうまく発達せずに生まれたこと、二分脊椎症は泌尿器科、脳神経外科、リハビリテーション科、消化器科など、多岐にわたる診療が必要な病気であることを訴えた。
このほどその裁判が行われ、エヴィーさんは見事に勝訴となった。支払われる損害賠償金で将来的な医療費もカバーされるとわかり、少しだけほっとしたという。
馬術の選手でもあり、傍目には神経障害がわかりづらいが、腸と膀胱の神経障害によって、いずれは車椅子の生活になると予想されている。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)