国立公園の「クマに近づくな」注意を無視し夢中で撮影 20代女に実刑判決
もしも事故が起きれば全米に報じられ、観光客やハイカーは遠ざかるだろう。国立公園側も真剣だ。
豊かな大自然を誇るアメリカの国立公園には、さまざまな野生の動物が暮らしている。クマとの遭遇は誰にとっても恐怖の瞬間だが、なかには写真や動画の撮影に夢中になってしまう人も。国立公園側にとっては、そんな客が一番厄介だ。
イエローストーン国立公園で、クマをおそれず身勝手な行動をとった女性客が起訴され、このほど刑務所へと送られたことを『WGNO/abc』『Billings Gazette』などアメリカのメディアが報じている。
■1名だけ身勝手な行動に
アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州にまたがる広大な敷地面積を誇り、世界遺産としても大変な人気を誇るイエローストーン国立公園。1872年に開設された、世界最古の国立公園でもある。
そこで今年5月中旬、ハイカーたちの前にグリズリーことハイイログマが突然現れた。周囲の誰もが車に逃げ込んだなか、1名の女がクマに4.5メートルの距離まで近づき、夢中になって撮影を続けたという。
公園側は同25日、Facebookを通じて人々にその人物に関する情報提供の協力を呼び掛けていた。
■懲役4日の実刑判決
その後、SNSへの動画投稿がきっかけで女の身元が割れた。イリノイ州キャロルストリームから訪れていたサマンサ・R・デーリングという25歳の女で、8月に自然公園法違反の容疑で起訴され、このほど懲役4日の実刑判決が下った。
不慮の事故から守るため、ハイカーや観光客たちに対して「動物のエサ場となっている場所には近づかない。もしも遭遇したら距離を取り静かに逃げる」と常に指導してきた国立公園局(NPS=National Park Service)。それを無視し、身勝手な行動を起こした罪は重いという。
■「踏み込んでいる」と意識を
国立公園は動物園とは異なり、人と動物を隔てる柵がない。もしも事故が起きれば大きなニュースとなり全米に報じられ、観光客が遠ざかれば収益事業としても大きな打撃を受けるが、休業や閉鎖だけは避けなければならない。
そのため、NPSは「野生動物の生息地に人間が踏み込んでいる」という自覚を持つよう、観光客に強く求めている。注意やルールを守らない勝手な行為には、刑事罰が下るということも忘れてはならないようだ。
■バイソンやオオカミも
ハイイログマは獰猛(どうもう)だ。デーリング被告は無事だったが、今年7月にはモンタナ州西部のオーバンドで、キャンプ中の女性がテントから引っ張り出され、殺されている。
またイエローストーン国立公園では、バイソンに近づき執ように刺激した72歳の女の観光客が、ツノで突かれて負傷する事故も起きていた。クマばかりかバイソンやオオカミも危険であり、見かけたら車に逃げ込み、近づいてきたらクラクションで追い払うよう指導しているという。
・合わせて読みたい→動物園で遭遇したクマ、まさかの行動に… 野球ファンから怒涛のスカウト相次ぐ
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)