軽症の新型コロナから回復もウイルス再活性化か 心臓にダメージで男性が移植手術
新型コロナウイルスでは、ウイルスが休眠、あるいは潜伏という状態で体内にくすぶり続けることがあるという。
40代以下なら感染してもおそらく軽く済む、と考えている人も少なくない新型コロナウイルス。しかし、軽症であってもじつに多くの人がつらい後遺症を経験し、いつ中等症や重症に陥るか予測がつかないのが現状だ。
そして、ウイルス検査が「陰性」となった後にも、それが体内で静かに潜伏し続けているとしたら…。
軽症と言われたのに心臓に強いダメージを受け、移植手術が行われたアメリカ男性の話題を『CBS News』『Mail Online』など英米のメディアが伝えている。
■「軽症」と診断される
このほど無事に心臓移植手術が成功したという、ペンシルベニア州ピッツバーグ市のダン・スタイペティッチさん(48)。
スキーを愛する冒険家で、普段はフィットネスインストラクターとして活動している健康体だったダンさんは、昨年11月に新型コロナウイルスに感染。医師からは「軽症」と診断された。
軽症で心臓にそこまでのダメージが加わるものなのか、この症例は多くの専門家の関心を集めている模様だ。
■5ヶ月後に風邪を引き…
新型コロナウイルス感染後はしばらく安静にし、今年1月にはウイルス検査の結果も陰性に。それで完治したと思っていたダンさんだが、その後も胸の違和感は続き、ウェイトリフティングでは以前ほどの重さを上げられなくなってしまった。
そして今年4月に風邪を引いたダンさんは、呼吸が苦しく横になることができなくなり、家族の強い勧めで再び病院へ。検査の結果、心臓に大きな問題があることが発覚した。
■心臓のポンプ機能にダメージ
医師はその病状を、新型コロナウイルスにより心臓のポンプ機能がダメージを受け、血液を送り出す力が弱まる「心原性ショック」と診断。ダンさんに、全身および心筋組織の循環不全が起きていること、腎臓と肝臓にも機能低下が認められることなどを説明した。
ダンさんは心臓移植しか助かる道はないと知らされ、補助循環用ポンプカテーテルで時間を稼ぎながら、心臓を提供してくれるドナーをひたすら待ち続けたという。
■休眠後に再活性化の可能性
ダンさんの心臓移植手術を執刀したアザム・ハディ博士は、ピッツバーグを拠点とする非営利組織「アレゲニー・ヘルス・ネットワーク(AlleghenyHealth Network)」に所属する心臓外科医の権威。
重症患者を多数診てきた博士にとっても、新型コロナウイルスに端を発したとみられる心臓の移植手術は初めてのケースだったそうだ。
軽症患者であっても、一部においてはウイルスが休眠あるいは潜伏という状態で体内にくすぶり続け、やがて再活性化する可能性があるとの見方が、世界の臨床現場から相次いで報告されているという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)