妊娠9ヶ月にして胎児が死亡する悲劇 飼い猫由来の「先天性トキソプラズマ症」か
女性が妊娠中に“初めて”トキソプラズマに感染した場合、約30%において胎児に垂直感染が起こるという。
「あと少しでわが子を腕に抱ける」と実感するといわれる妊娠9ヶ月。そこで胎内の赤ちゃんの死亡を知らされるのは、どれほど悲しいことだろう。ブラジルのある女性の身に起きたトラブルの話題を、オーストラリアのメディア『7News.au』などが報じている。
■ひどい出血で病院へ
ブラジル・サンパウロ州のサンビセンテ市に暮らす、ミレーナ・グロリア・カルドッソさん(19)。彼女は妊娠9ヶ月だった9月18日、ひどい出血に気づいて病院へ急いだ。
胎児の心臓が弱まっていることが確認されたが、帝王切開ではなく自然出産を選んだといい、その後に胎児の死亡が告げられた。
■女性は猫を飼っていた
ミレーナさんにはわが子の死に、「私のトキソプラズマが胎盤を通じて垂直感染したのでは」という疑念を抱いた。トキソプラズマは、猫を終宿主とする人畜共通感染性の寄生性原虫。猫を飼っていたミレーナさんは、妊娠5ヶ月の定期健診の血液検査により、偶然にも感染が判明していた。
食べ物や土からの感染もあるが、ミレーナさんの場合は猫の糞を処理する際に、トキソプラズマが口に入ったことが考えられるという。
■恐ろしい「先天性トキソプラズマ症」
トキソプラズマ症では、喉の痛みや発熱、リンパ節の腫れなどが起きる人がいる一方、健康で免疫機能が正常な場合、症状がまったく出ない人も。ミレーナさんは後者だった。
問題は、女性が妊娠中に“初めて”トキソプラズマに感染し、その約30%において胎児に垂直感染が起こるといわれる「先天性トキソプラズマ症」だ。
重症の場合は流産や死産が起き、無事誕生しても小眼球症、水頭症、小頭症などが確認されるケースや、やがて眼球の網脈絡膜炎やてんかん様の発作が現れるケースがあるという。
■発覚後のフォローアップなし
ミレーナさんにトキソプラズマ感染が発覚した際、医師は「様子をみていこう」と言うだけで、胎盤を通じて赤ちゃんに垂直感染が起きたかどうかの確認はされなかった。
こうした経緯から、妊娠9ヶ月での胎児の死亡に納得がいかないミレーナさんと親族は、警察に相談。問題は医療事故調査制度にゆだねられることになった。
だが保健当局は、ミレーナさんが妊娠する前から猫を飼っていたことから、妊娠中に“初めて”感染したとは限らないと主張。この争いの決着には、かなりの時間がかかりそうだという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)