自殺を思いとどまるよう説得して30年 メンタルヘルス界のメンターを悩ませる駐禁キップ
自殺を図ろうとしている人の意識を"こちら側"に引き戻すには、かなりの時間がかかるという。
駐車違反にもさまざまな事例がある。こんな所によくも…という危険なケースもあれば、急病や事故など緊急事態で仕方がないと思われるケースも。しかし今、監視システムが駐車違反車を検知し、自動的に料金を加算していく方法を採用している所は増える一方だ。
イギリス・ダービーシャー州に暮らすある男性の嘆きを、地元メディアの『Derby Telegraph』などが伝えている。
■「助けてあげてください」
ダービーシャー州ハイピーク地区のバクストンという町に暮らす、元俳優のライアン・ディオールさん(71)。彼は過去に自身が苦しんでいた経験を活かし、うつ病患者や自殺をしようとする人に寄り添いながら、30年にわたりメンタルヘルス界の良きメンターとして活躍してきた。
24時間対応のヘルプデスクに「自殺しようとしている人がいる。助けてあげてください!」という通報が入ると、ライアンさんに出動要請が。現場となる川、崖、橋、ビルの屋上などに、ライアンさんは車で急行するのだ。
■うつ病患者にとことん寄り添う
月日はかかっても、自殺を図ろうとする者や未遂に終わった者がうつ病の治療やカウンセリングを受け、気持ちの立て直しを図れるよう導くことが自身の使命だと話し、とても真剣に活動に取り組むライアンさん。
自殺は「もう少しで楽になれる」「天国に行ける」などと考えられがちだが、現実はそうはいかない。医療費がかかり、損害賠償金を求められるなど、残された家族に強いショックと多大な迷惑をかけるケースが少なくないという。
■説得には時間がかかる
ライアンさんは最近もある現場で1人の男性に近寄り、自殺を思いとどまるよう懸命に説得して何とか成功していた。だが、今の彼を悩ませているのは駐車違反の問題だ。
すでに気持ちがあの世に向かってしまっている人の説得には、かなりの時間がかかるそうだが、その後には、たいがい『Parkingeye』という監視システムによる「駐車違反の罰金通知(Parking Charge Notices」なるものが送られてくるという。
■「監視システムには敵わない」
違法駐車の抑止を目的に開発された『Parkingeye』のシステムは、地方自治体が管理する土地、公道ばかりか民間のオフィス、スーパーマーケットなどにもあり、「ここに停めた者はParkingeyeの規則に同意したものとみなす」といった看板もある。
罰金通知を無視すれば裁判所への出廷を命じられ、28日以内なら異議を申し立てることもできるが、裁判・弁護士費用がかかるうえ、その間にも利息がかさんでいく。黙ってさっさと支払うのが一番だそうだ。
かつて警察官たちは、ライアンさんによる長時間の駐車を人情の観点から容赦してくれていた。しかしそんな時代ではなくなってしまったことを、ライアンさんはただ嘆くばかりだという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)