「賃金変えず週4日労働」がスコットランドで試行へ 時給制やシフト制で課題も
スコットランド政府はこの取り組みに15億円の予算を投入。協力する企業に助成金を支払う予定だ。
スコットランド政府が、これから「週4日間労働」を推し進める方針であることを、『Scotsman』『The Independent』などイギリスのメディアが報じている。
同国の世論調査では、8割超が「収入が変わらないなら賛成」と回答しているといい、慢性的な過労を脱却し、自分自身あるいは家族と過ごす時間をもっと確保したいと考える人は、大変多いようだ。
■15億円の予算を組む
新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界的にテレワークの徹底が呼びかけられ、以前のような通勤や勤務の体制に戻れる見通しも立たないなか、スコットランド政府は「週4日勤務(週休3日)」という新たな労働体制を普及させようと真剣だ。
大まかに考えると、5日間の8時間労働を4日間の10時間労働にする。これに1,000万英ポンド(日本円で約15億円強)の予算を組み、導入した企業には助成金を支払うと約束している。
■「週4日思い切り働くほうがいい」
スコットランド政府が自信をもってそれを推し進める理由は、ロンドンを拠点とする有名なシンクタンク「IPPR(Institute for Public Policy Research)」が行った、ワーク・ライフ・バランスに関する調査の結果だ。
調査に協力した16~65歳までの2,203人のうち、65%が「労働時間の短縮」を望み、「週4日の労働が最適」と答えた人は80%以上。それにより幸福度が上がれば、労働意欲や生産性の向上にもつながると、多くの人が考えていることもわかったという。
■課題も多く
ただしIPPRは、サービス業ほか、時間給で働いている多くの労働者たちを無視するわけにはいかないとしている。
勤務日数や時間の短縮は、時給がアップされない限り報酬の減少につながり、かといって長時間労働にすれば体に堪える。事業主の側も、おのずと人を増やす必要が出てくるだろう。
また、勤務時間帯についてシフト制を採用している職場では、シフトの組み方を変える必要が出てくる可能性も。これらの点をどうクリアするかは、大きな課題だという。
■工夫、改善、知恵も必要
ちなみにフランスでは週休3日制をすでに導入している企業があり、アイスランドでも試みが成功。ニュージーランドでは、試行時のモニタリング調査で「生産性が20%も上昇」というデータをオークランド大学が発表していた。
賃金を変えずに労働日数をどう減らすかについては、仕事により集中し、質の高いパフォーマンスを提供するという意識が全ての従業員が求められる一方で、組織としても不要な会議をなくすなど、効率化のための工夫や改革が求められるという。
日本がこれを考える日は、果たして来るのだろうか。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)