キッチンで主婦が変死 家電に衣類が引っ掛かる稀な窒息事故と断定
司法解剖では、脳卒中の再発を含む病死、自然死、故殺を示す証拠はいずれも得られなかった。
キッチンで起きる不慮の事故と聞くと、原因として思い浮かぶのは刃物、揚げ物の火、調理器具の破裂や感電などだ。揚げ物の油やフライパンから炎が上がり、袖や胸元に引火するという事故は、意外にも多く発生しているという。
だがキッチンには、これ以外にも事故の原因となる「危険物」があるようだ。イギリスで起きた極めて珍しい死亡事故の話題を、『LancsLive』『Express UK』などが報じている。
■第一発見者は滞在中の甥
今年1月24日、イギリス・ランカシャー州のブラックバーンで、当時52歳だったジャッキー・ミシェル・コットリルさんという主婦が、自宅のキッチンで変死体となって発見された。
彼女は6年前に脳卒中を患ったが、当時の健康状態に問題はなく、地元の飲食店で元気に働いていた。遺体の第一発見者は、その家に滞在中だった甥のジョシュ・ブロックルバンクさん。「呼吸をしていない」という通報だった。
■異変に気づかなかった甥
当時の状況について、ジョシュさんは警察にこのように話していた。
「おばはその朝、僕のためにベーコン・サンドイッチを作ってくれていた。僕はダイニングで1人でそれを食べ、また部屋に戻って眠り、午後1時頃に目が覚めた。その1時間ほど後、おばがキッチンで倒れていることに気づいた」
当初、警察にとってジョシュさんは重要参考人という位置づけでもあったが、家族も含めジャッキーさんとはずっと良好な関係にあることがわかった。
■「経験したことがない事例」
ジャッキーさんの遺体については司法解剖が行われ、警察は事件・事故の両方を視野に入れて慎重に捜査。しかし、家に不審者が侵入した形跡や室内で争った形跡はなかった。
ジャッキーさんの死から7ヶ月近くが過ぎた今月18日、その死因審問が州都であるプレストンの検死裁判所で行われた。
司法解剖の結果を述べるにあたり、ジェームズ・アデリー医師は「私は法医学医になって20年ですが、こんな事例を経験したのは初めてです」と前置きしたという。
■パジャマのシャツが…
剖検の結果について、脳卒中の再発を含む病死、自然死、故殺を示す証拠は得られなかったと述べたアデリー博士。
続いて「ジャッキーさんはキッチンで何らかのはずみで転び、その際、大型オーブンのハンドルがパジャマのシャツに引っ掛かり、勢いよく首を絞めつけ窒息させたと考えられる」と述べた。
こうして、その事例は極めて珍しい悲劇的な窒息事故死と断定された。「まさかそんなことが…」と愕然となった法廷の親族。ジョシュさんに向けられた疑いが晴れたことだけが、せめてもの救いだという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)